Monster Makers’ Conflict-第0部第1章:再起の旅立ち・プロローグ7:シャットの悪戯

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第0部第1章:再起の旅立ち

プロローグは今回で終わりです

プロローグ7:シャットの悪戯

私はリュミール、吟遊詩人で
今はシャットさんのお使いの帰り道だ
幸いまだ日は高い
歩いて行っても
日が暮れる前にシャットさんの館に入れるだろう
少なくともあそこは安全だ
シャットさんも彼の部下もいる
ベドフォードもたぶん手出しはできないだろう
だから、私たちは館から見えない距離まで歩き
そこから先は走った
「やぁ、早かったね」
まだ日が高いうちにシャットさんの家の前に
私たちは滑り込んだ
シャットさんは、ちょうど他の人と立ち話をしていたところだった
「やっぱり館で何かあったみたいだね」
さすがシャットさん、話が早い!
私たちはシャットさんへ館での出来事を話した
ベドフォードと一緒にいたシャーズの女性の事
そして、向こうが私たちの名前を知っていた事も
「なんだって、それは本当かい?
おかしいなぁ、ボクはキミらのことを
一切向こうには話していないぞ?」
と、いうことは・・・
向こうはこっちを監視しているという事だろう
でも、シャットさんの館の中にいる私たちを
どうやって知ったのかが分からない
例えシャーズのシーフであっても無理だ
何故なら、この館はシーフスキル持ちの使用人さんで
あふれかえっているから(汗)
ふと、私はシャットさんと立ち話をしていた人が
こちらを見ている事に気が付く
ガッシリとした体躯の大男だ
兜で頭がすっぽりと隠れている
「あの・・・どうしました?」
「あ、いや・・・済まない」
私と彼は初対面・・・の、はずだ
でも、私は彼が私を見ていることを不快には思わなかった
むしろ自然に受け入れていた
前世で何かあったのだろうか・・・?
それに、彼を見ていると
何故か「ツチラト」を思い出した
きっとツチラトもすでに転生しているだろう
今でなくても、いつかきっと・・・
「!?これは・・・・・
奴め、もう仕掛けて来たのか!!」
大男さんが叫ぶと同時に
急に寒気が私を襲った
周囲が酷く暗く感じる
闇の気配が覆っているのだ
そして、こういう事をする種族を
私は良く知っていた
「気を付けて!『悪魔』が来る!!」
私は叫んだ
私の警告を聞いて
ドミニクが真剣な顔で拳を構え周囲を伺い始める
私はベステラを背後に庇い
意識を集中した
「悪魔」はウルフレンドの生命体ではない
「魔界」と言う、別世界から来た存在だ
この世界にある「闇」を食うため
やってきた「侵略者」だ
あの「空から来た連中」の中には
悪魔と親しいのも少なくなかった記憶がある
「あ~も~、モンタズナかモンドールか知らないけど
人の庭で何してくれてるんだよ~!」
シャットさんは文句を言いながら小さい笛を取り出すと
それを勢いよく吹いた
「あいつらの手下、ならいい
だが奴だったら・・・
奴は直接手を下すことを好む好戦的な輩だ
この転生したての身で勝てる相手かどうか・・・」
どうやら大男さんは悪魔か
悪魔と通じている奴に心当たりがあるようだ
後で話を聞こう
私は前方に意識を戻した
風が渦巻いて闇が濃くなり
風の中心から、おぞましい存在が出現した
炎をまとった3つ首の獣のような姿のそれは・・・
「ギャア!!」
いきなり悲鳴を上げた
見ると、短剣が背に刺さって
そこから白い煙が出ていた
「お頭!ご無事ですか!!」
あちこちから壁を越えて屋根に上って
シーフの格好をした人たちが来る
あっという間に館の周囲は
彼らに囲まれてしまった
「これを使って!」
シャットさんはドミニクに瓶を投げて渡した
ドミニクは
すかさずそれを飲み干す
「うん!力がみなぎってくる!!」
そう言ってドミニクは
ちょうど正面から向かってきた悪魔の顔に
拳を振るった
悲鳴を上げて悪魔がのけぞり後退する
シャットさんは・・・
ポカンとしていた
周囲のシーフさんたちも口をあんぐりと開けている
「何やってるんだ、コイツ?」と言う声が
音を介さずに聞こえた
「あの、ね、それ・・・・・・
飲むんじゃなくてアイツにぶつけるか
キミの手足にかけて使って欲しかったんだけど・・・
いや、大丈夫ならそれで構わないんだけどね、うん」
シャットさんがものすごく気を使いながら説明してくれた
なんとなく悪いことをしてしまった気がする(汗)
ともかく、今はこの悪魔を倒すことに集中すべきだろう
ピンチになったら仲間を呼ばれる可能性もあった
この世界に今どれだけの数が入ってきているかは知らないけど
グレーターデーモンのような上位種族が来たら
駆け出し冒険者の私たちの全滅は免れない
私は愛用のリュートを構え
演奏しながら歌った
「励ましの歌」だ
悪魔と戦うみんなの気持ちを鼓舞し
恐怖による硬直を和らげる
私は吟遊詩人だけど、戦えないわけじゃない
あの日、ヴァンパイアに襲われて
エミリオンお姉ちゃんが犠牲になった時から
ずっと練習していた
同時に決意する
「この戦いで一人の犠牲者も出さない」と!
「サンキュー、これならやれる!」
私の脇を抜けてシャットさんが飛び出した
「ギャアアアアアアアア!」
聖水の瓶をぶつけられた悪魔が悲鳴を上げる
全身から白い煙が昇り
三つの首がバラバラに叫んだ
その目が私を睨みつける
「当たれぇ!!」
私の頭を飛び越えて
高く飛んだベステラが瓶を二本同時に投げた
私に飛び掛かりかけた悪魔の真ん中の頭の眉間に
二本とも直撃した
真ん中の頭は完全に崩れていく
でも、相手にはまだ2つの頭があった
先ほどより弱っているものの少し動きが鈍くなった程度で
絶命までは程遠い
頭を完全に潰さないと倒せないようだ
「こっちだよ~」
シャットさんは悪魔を挑発した
「ガアアアアアア!!」
怒った悪魔はシャットさんへ突進する
怒りのあまり
その後ろに何があるのかすらも見えていないようだ
シャットさんは突進をひらりと回避した
悪魔はそのまま直進して
シャットさんの背後にあった大きな池に飛び込んだ
「ギ・・・・」
断末魔すら上げる余裕も無く悪魔は池の中に溶けて消えた
「持っていた聖水を全部ぶち込んで正解だったよ」
さすが、『ウルフレンド最悪のいたずらっ子』だ
悪戯で悪魔を倒すような人は彼くらいだろう
*
*
*
ベドフォードは汗だくになって
床の上に倒れこんだ
ここは、彼の自室の一つ
床には魔法陣が描かれており
周囲には魔力を増幅する装置が
部屋の壁をなぞるように並んでいる
たった今、放った悪魔「ケルベロス」が倒された
誰かは分からないが、
ベドフォードは、それだけは感知できた
「しくじったようだね、ベドフォード」
息も絶え絶えのところに追い打ちをかけるように
部屋の中にビーリアが入ってくる
「び、ビーリア様・・・これは、その・・・」
このままではこの場で粛清されると思ったのか
ベドフォードは弁明を始めようとした
ビーリアは首を横に振って言った
「もういい、お前は何もするんじゃないよ」
絶望的な顔になるベドフォードへ
ビーリアは笑って言った
「勘違いするんじゃないよ、あんたを切り捨てるって言ってるんじゃない
あんたが手を出す必要がなくなったって言ってるのさ」
ベドフォードはホッとした
それと同時に疑問が頭に浮かぶ
「私が手を出す必要がなくなった、とは?」
ビーリアはその質問に答えた
「私たちはこれ以上は一切手は出さないってことさ
少なくともしばらくは、ね
シャットの疑念が薄まって監視が離れるまでは・・・」
言いつつビーリアは傍にあった机の上に腰掛ける
「もちろんすでに手は打ってあるよ
動かせる戦力に無理がない程度に動くように
指示しておいた
何人か個人的にゴタゴタ抱えてるみたいだったから
吉と出るか凶と出るかは
分からないけどねぇ」
ベドフォードは頷いた
少なくともこの場で失敗の責任を取らされる危険は
回避できたようだ
自分たちは動けないだろう
だから、とにかくひたすら「埋め合わせ」を続けるしかない
それすらできないのなら、この女は自分を切り捨てる
いや、「ガマグチヨタカ」に直接引き渡すくらいはするだろう
アレの残忍さはトリカゴ内部であっても有名だ
アレのオモチャにされるくらいなら・・・・・・
もう失敗は許されない
ベドフォードは傲慢だが頭の切れる男ではある
しばらくの雌伏を受け入れる事に躊躇は無かった
*
*
*
「間に合ってよかったよ、みんなもご苦労様!」
シャットさんは駆けつけたシーフたちに
労いの言葉をかける
「・・・なんだ、奴じゃないのか?
いやに呆気ない・・・
それに、奴が襲ってくる気配もない・・・?」
大男さんは、見知った相手が襲ってきたものと
思っているようだ
「奴」とかいう相手が気になるけど・・・
それより、私は聞きたいことがあった
「シャットさん、あの人たちってシーフですよね?」
私の質問にシャットさんは目を見開いて毛を逆立てて
ついでに尻尾も直立させて驚いて見せた
「う、うん・・・そうだね、もう誤魔化せないか・・・」
シャットさんはとうとう白状した
シャットさんは、なんと「シーフギルド」を統べる
リーダーだと言うのだ
商人をしていると言うのは本当で
投資で一山当てたというのも本当らしい
ただし、彼自身は真面目に働くよりも
楽しく儲けることが好きなので
運営とかは信頼できる部下に任せて
自分は何か楽しく儲けることができる仕事を
専らしているそうだ
「あんたは海賊家業以外の生き方を見つけて来な!」と
「ノーラの姉御」から叱咤激励されて
彼女の元を独り立ちしてから色々やってきて
今に至るとは聞いている
最近は私たちの故郷である一座「エリミネッタ」の財を預かって
それを増やして決められた分を毎月渡しているとのこと
「団長がね、儲かってるなら自分も一枚噛ませてくれって言ってきて・・・」
なるほど、あのボレソラン団長なら言いかねない
彼に出資したのは、もちろん団長だけじゃない
シャットさんが今まで築いた人脈のあちこちから
彼を信頼してお金を出してくれる人が
たくさんいるのだ
・・・あいにく、旅の身の私のお財布はそこまで大きくはないけど
いつかは恩返しに投資をしたいと思う
「リュミール、知らせがあるんだが・・・」
大男さんが私に声をかけた
「あれ? カブトさんなんでリュミールの名前を知ってるの?」
「か、かぶと・・・・・・?」
大男さん、なんか地味にショック受けてる・・・・・・(汗)
筋肉ムキムキに見えるけど心は繊細なのかもしれない
「失礼した、私はドブロヴォイ
勇士ツチラトの父だ・・・久しいなリュミール」
大男さんの正体は、私にとって大きな驚きだった
私は真後ろに倒れた
「え?」
「リュミールお姉ちゃん!?」
ドブロヴォイ様との再会、ツチラトの名前を聞けたこと
悪魔に勝った事
色々なことが頭の中でごちゃごちゃになって
私は気を失った



私が目を覚ましたのは、翌日のお昼だった
私が寝かされているベッドのすぐ傍のソファーの上で
ベステラが眠っていた
どうやら付きっきりで看病してくれていたようだ
私はベステラに起こさないように
そっと毛布を掛けて
そっと部屋の外に出た
ちょうど、ドミニクと話をしながら歩いてくる
ドブロヴォイ様と遭遇した
「リュミール!元気になったんだね!」
「ごめんなさい、心配かけたわね
・・・ベステラが寝てるから、静かに、ね?」
私は人差し指を立てて「し~」という
ジェスチャーをした
ドミニクは分かってくれたのか
自分の口を押える仕草をする
「リュミール・・・その、辛い知らせになるが
話してもいいかな?」
ドブロヴォイ様は本題を切り出した
私が頷くと、彼は言った
「ヴィシュナス殿の『予言の塔』は知っているな?
その塔が崩れたらしい」
私は驚いた
彼女と団長は親しい付き合いがあった
ベステラもヴィシュナス様から「授かった」娘だと
団長から聞いている
「ヴィシュナス殿は、恐らく・・・」
ドブロヴォイ様の言葉に私は頷く
あの塔はヴィシュナス様が死なない限り絶対に崩れない
そう団長から聞いていた
と、いう事は逆に言えば
塔が崩れた時はヴィシュナス様が亡くなられた時という事だ
ふと、私はあることを思い出した
「塔にいた女の子は分かりませんか?
ヴィシュナス様には女の子の弟子がいたはずです
水色のウィッチローブが特徴の子が・・・」
水色のウィッチローブの、ベステラと仲が良かった
あの子と同い年位の女の子「ルフィール」
無事に逃げ切れただろうか?
「ああ、そういえば・・・
水色の服の少女とバケツを被った男が
塔の近辺で目撃されていたらしい」
ドブロヴォイ様の発言で私はルフィールの無事を確認して
ほっとした
同時に思うのは・・・
「バケツを被った男」って誰?
そんな知り合いは私にもヴィシュナス様にもいないはずだし
居たら絶対に団長とかに話しているだろう
と、いうことはルフィールを助けた「通りすがりの誰か」だろうけど・・・
なぜ「バケツ」を被っているのか不思議だ
ともかく、私たちの次の目的地は決まった
ヴィシュナス様の塔のある「ヴィシュナスの里」だ

(第1部へ、つづく)

 

 

 

<解説1>ドブロヴォイ

「乙女戦争」より、「ツチラト」の父親です
たぶん伝説でもツチラト仇討ち合戦に参加しているはずなのですけど
ツチラトがプシェミスル王に
自己紹介する時に名前が出たのみと言う
影のものすごく薄い「勇者の父親」(汗)
あの物語自体が「ツチラトとシャールカの悲恋」なので
主役でもない彼があまり出ないのは
当然と言われるとそうかもしれませんが(汗)

このSSでも「ツチラトの父親」であることに変わりはありません

 

<解説2>シャット

公式設定とノベル「リザレクション」を参照しました
投資も館の建築も
彼にとっては「楽しい事」だったのでしょう
新しい世界でも元気でやっているようで
公式設定を見てほっとしました

 

 

ではまた

 

 

 

 

 

 

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