Monster Makers’ Conflict-第1部第3章第3話:揺れる(物理)ブルガンディ
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第1部リザレクションの序章
地震発生(火山性)
////////////////////////// //////////////////////////第3章:炎の帰還
////////////////////////// //////////////////////////第3話:揺れる(物理)ブルガンディ
私はリュミール、吟遊詩人だ
「やぁ、よく来たねいらっしゃい!」
私たちはシャットさんの館を訪れた
再会の約束をしたのもあるけど、
ウルフレンドで一番情報が集まる場所といえば
ここを指す人がほとんどだろう
「シャット殿、少し話をしてもよいか?」
「うん、いいよ
みんなは好きにくつろいでて」
私のカバンの中にはヴィシュナス様の水晶玉がある
彼女にばれないようにルフィーアについての情報
そして、もう一人のルフィーア『ルフィール』についての情報が欲しかった
二人のこととなると彼女はどうにもおかしい
知らぬ存ぜぬの一点張りだけど、そんな事はないだろう
彼女は『予知』の能力で有名な魔術師だ
ルフィールちゃんが未知数と言っても、ルフィーアとの出会いでどうなるかという事は
予知で知っているはずだ、なのに私たちには隠している
実の妹であれほど求めていたはずのルフィーアにすらも
「あれ?
なんか音がしない?
というか、揺れていないかな?」
席について夕食が運ばれてくる最中だったけど
急にドミニクが言った
私たちは沈黙して聞き耳を立て様子を伺う
確かに揺れている
小さいけど長い揺れだ
コップの果実汁も
頭上の豪華なシャンデリアも揺れている
「地震だ!みんな外に出るんだ!!」
と、部屋に飛び込んできたシャットさんが言った途端に揺れは収まった
「ごめん、ちょっと出かける!
みんなの無事を確認しないと・・・!」
シャットさんは部下に私たちの世話を頼み、足早に出て行った
後日、『シャットが一声で”地震を止めた”』とかいうウワサが
ブルガンディ島を含む船乗りたちの間で流行することになるけど
それはまた別のお話
*
*
*
あたしはアルボア、女闘士だ
ボンベート山で、あたしは『自称』闇の女王のガイアーネの指示で働いた
本当に働いた、つまるところ分かりやすい肉体労働だ
誰かが崩したらしい行動の出入り口と
そこにあった封印を剥がす作業が主だった
『連れ』のホエイはというと、グラナールがやるような魔術のあれこれを
剥がしたり直したりする作業をしていた
作業が終わるころには、すっかり日が暮れた
しばらく中でやる事があるからと、ガイアーネから休暇を出されたので
あたしとホエイはボンベート山を降りてブルガンディの町に戻った
ボンベート山の中で夜を明かすことにならないのは良かった
あそこはゾール神殿があると聞いている
あたしの部族もかつて崇めていた神様だけど、
ディスボール信仰が入ってきてからは主なのはそっちに切り替えられた
やがてゾール信仰も闇のゾールを崇めるものになっていったわけだけど
姫族長と違って神様のことは、あたしにはよく分からない
昔は真剣に祈りを捧げていた時期もあったかもしれないけれど
今のあたしにはそんな心は失せていた
宿に戻った あたしは主人へ体を洗う湯と食事を頼んでから
ホエイと一緒に部屋に入る
「で、あのガイアーネっていうのは結局なんだ?」
あたしはホエイにさっそく聞いた
最初は胡散臭い年増女かと思ったが
その実力は本物のようだし
何よりあのゾール神と懇意にしているというのが嘘ではない様子から
下手したらミッドガルダとかのあたりに匹敵する実力者に思えたからだ
「彼女は相当古い時代から存在しているネームドです
詳細データはロストしているため推測でしかありませんが
『神により近い古代種族』『神人』である可能性は高い
と、女神は結論付けました」
『女神』というのは神様ではない
ホエイたち『トリカゴ』の中枢にある機械のボスの名前だ
いわゆる『王様』にあたる『総司令』の助言者で参謀役だと言う
つまりホエイたちは機械の上司を持っていて
そいつの命令も聞いて動いているわけだけど・・・
まぁ、こいつらの価値観を考えたところで
あたしに理解はできない、か
「そうそう、そういえば言い忘れましたけど・・・」
ホエイがそう切り出した時
宿屋が揺れだした
「ちっ!」
あたしはホエイを抱えると窓を開けて飛び出した
泊まる部屋は2階にあるけど、構わない
もっと重い荷物を持ったまま飛び降りる事もできる程度には鍛えている
幸いというか、揺れは外に出てすぐに収まった
「・・・地震が来る予知夢を夕べ見ました、そういえば」
揺れが終わった後でホエイはこう言いだした
「「遅い!!」」
あたしと『蛇』は同時に突っ込んだ
魔術師にはこういう能力を持つ奴の話は多いけど
事が済んだ後で予知を言い出されても役に立つわけがない
子供でも分かる理屈だ
「ついさっき思い出したばかり」
「宝の持ち腐れとは、まさにこの事だな!」
『蛇』のツッコミは終わらない
当初はこいつミッドガルダじゃないかと思った
アレは蛇の化身だと聞いているから
でも、色が赤と黒でしかも双頭なので別人?だと分かった
見たところホエイから出てくることはできても長く離れることは無理なようだ
こいつはこいつで、どんな存在なのか・・・?
「あの、ありがとうございます」
「・・・ん、ああ・・・」
咄嗟にだけど、抱えて助け出したことにホエイは礼を言ってくれた
前に組んだ魔術師は『守るのが当たり前だ』と言わんばかりで
例の一つも寄こさなかったから、逆に新鮮に感じた
「しかし先ほどの地震は一体・・・」
「恐らく火山性の地震だ
ボンベート山の、な」
二人の会話で、あたしはガイアーネを思い出した
あいつ、何かやらかしたか?
あたしが手を貸したことを後悔するような事をしなけりゃいいけど・・・
いや、あたしは戦でも闇の軍団でも色々と『後ろ暗いこと』はやってきたんだ
今更・・・・・・
ただ、ガイアーネがうっかりでも
あたしの事を誰かに話してそれで追い回される羽目になるのはごめんだ
*
*
*
「調子はどうだ、ガイアーネ?」
ひとしきり必要な儀式が終わったところで、
ゾール神殿に入ってきた者がいた
しかしガイアーネはその侵入者を咎めない
呼び捨てにされたことも馴れ馴れしい口調も許していた
何故なら、そいつはそれに値する実力をもっているからだ
「これはこれは—-殿、事が終わるまでエルセアで待っていてもよかろうに」
—-と、名前で呼ばれた『タカ』は苦笑しながら言った
「お前の実力を疑っているわけじゃねぇよ
こういうのは一番近くで見届けたい性分でな」
ガイアーネは彼を気に入っていた
この男は『光』を『正義』を、かなり憎悪していた
その理由は男の経歴を聞いて納得した
そしてそれは、『正義』の活動がそれをもたらすことを危惧すべきだった
生まれるべくして生まれた憎しみだ
それが光の勢力に牙を剥くのを見ることにガイアーネは歓喜を覚えていた
自分たちが正しいと信じて行ったことが悲しみを生み恨みを生み
そして新たな闇が生まれる
そんな『皮肉』を前にした光の面々が
自分が神になるのを今一歩のところで阻止した者共が
果たしてどんな顔をするのか
彼女は楽しみでたまらなかった
(つづく)
解説1:地震
カードにもなっていた
「ボンベート山の噴火」イベントが
この章のメインです
なので、徐々に噴火に近づいていくように描写を入れていきます
解説2:ゾール神とディスボール神
双方とも「闇の神」として知られ
ベング高原など各地で崇拝されていますが
ゾール神は少なくとも最初は「祭りが好きな農業と酒の神」でした
そのためヒューマンの担当になったり
彼が闇に落ちた後も信仰が残っていたりしました
逆にディスボール神は完全に闇=悪の神です
ゾール神との最大の違いは、
ゾール神が災いをもたらすことはあっても
崇拝される神として振る舞う心を持ち合わせていたのに対し
ディスボール神は信者や崇拝者を完全に『道具』程度にしか見ておらず
小説『嘲笑う石像』においてはガンダウルフ様を引き込むために
熱心な崇拝者で使徒だったはずの魔術師クルガンを裏切り
手酷い目に遭わせています
ではまた