Monster Makers’ Conflict-第1部第3章第9話:かつての師の過ち | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第1部第3章第9話:かつての師の過ち

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第1部リザレクションの序章

とあるカードが元のお話です

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第3章:炎の帰還

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第9話:かつての師の過ち

男は拳の道を究めんとする闘士だった
ある日、彼は襲ってきた盗賊娘を打倒し弟子にした
彼の目から見ても鍛え上げた肉体を持つ娘だった
やがて彼は弟子を連れたままケフルの軍に入った
戦場ならば己も弟子もより鍛えられる
何より人々の助けになる
名を上げることもできるだろうと考えた
しかし、『大戦』の記憶を失っていたことで彼は戦場の何たるかを忘れていた
戦場に出てようやく彼はかつての記憶を断片的に取り戻し
それを思い出した
だが、彼にはもう退路など無い
オークの群れを完全に打倒し危機を押しのけるまでは去ることなどできなかった
そして昔と違い、オークの群れは本当に群れであった
軍隊ではない、部族単位の襲撃者たち
すでに国も無く王も無い彼らは純粋に略奪を目的として
ヒューマンですらもそういう者がいるように
彼らは食うに困って、あるいは流れ流れて加わったのだろう
その数は一向に減らない
男はいつしか、忙しさで最初の目的を忘れていった
兵士の命の重さも、忘れつつあった
ただオークを押し返すだけの日々が過ぎていく

ある日、『タカ』を名乗る異形が率いるオークの集団が来た
前線の砦にいるネームドを狙う彼の参戦で戦況は一変した
次々と戦力を討ち取られていき
砦の陥落は時間の問題になるまで悪化していった
「撤退は命令だ、負傷者は置いていけ」
男は苦渋の決断を下した
この世界に国際法など無い
負傷者に残されたのは死ぬまで戦うか自害するか殺されるのを待つかだけだ
当然、抗議の声は上がった
しかし男は抗議を押し切って命令した
この時、男は戦争のことで頭がいっぱいだった
たかが最前線の砦に兵士たちが未練などあるはずもない
ただ後方の砦に下がるだけであり、そこは後詰めの戦力も武器も食糧もある
負傷者たちも死ぬまで戦うことを覚悟してここに来ている事は分かっている事で
置いて行かれる可能性もその後の対処も織り込み済みである
にもかかわらず
なぜ処刑をちらつかせる段階まで反対の声が根強かったのか
それについて男は疑問を挟むことはなかった
むしろ撤退が予定通り進むことに安堵さえしていた

撤退完了後、彼は兵士たちの抗議の真意をようやく知った
点呼で弟子が居ないことに男は気が付いた
男は弟子を探し回ったが、どこにもいない
自分に失望して出て行ってしまったのだろうか?
男は焦った、久しぶりに個人的な理由で
困った末に部下の兵士に弟子がどこにいるのか聞いてみたところで、
「隊長、あんた本気で言ってるんですか?」
怒りと呆れの混ざった声で言われた
そこでようやく、男は己のしでかした過ちに気付いた
そしてこの上なく後悔した

弟子は、負傷者として置き去りにされていたのだ
彼女は仲間の盾になるべく前線で戦い傷ついていた
だからそれを知る兵士たちは負傷者を置いての撤退に
あれほど反対したのだ
しかしすでに撤退は完了している、後方に位置するこの砦の門も閉ざしてある
そして、元居た砦の方角からは戦闘を知らせる音が響き渡っていた
男は師匠と指揮官の二つの立場で板挟みになった
立場を捨ててでも弟子を助けに戻るべきか
私情を捨て踏みとどまるか
それを悩んでいる間に
前線の砦は陥落した
置いて行かれた負傷者は全滅した

報告を聞いた男は元居た砦に向かった
長い距離を短時間で駆け抜け怒りのまま砦を落としたオークの軍を殲滅した
『タカ』はそこには居なかったが
様子見に来たのか、砦を漁っていたアリクレールと
そのマスターを撃滅した

そうして得た『竜殺し』の称号は
しかし、男の心に空いた穴を埋めることはできなかった
男は軍を辞して拳を封じる決意をした
元居たベング高原に向かい、武具を埋め
死んだ弟子と部下だった兵士たちを生涯かけて弔うつもりだった
ケフルを去りベング高原へ向かった
生きることも困難な過酷な環境を終の地にすべく探していた時
とある寒村へさしかかり、村を襲っていた魔物を倒した
人々を助けるため一度は封じると決意した拳を振るった
そこで『ドミニク』という孤児を拾い
男は生きる目的を変えた
男は彼女を育て修行の名目で共に切磋琢磨した
いつしか男はこう考えるようになった
自分があの戦場で生きながらえたのは
この子にすべてを教えるという『リザレクション』が
課せられているからではないか、と・・・
*
*
*
「て、お師匠様から姉弟子の話を聞かされてたんだ~」
私はリュミール、吟遊詩人だ
ドミニクは私が促したことで、やっと話を思い出してくれた
一方・・・
アルボアは、自分の顔を抑えていた
「そういえば、ペリエールには前世で師事していたという話があったなアルボアよ?」
モンタズナがアルボアに言った
「そっちは、いいんです・・・そっちは・・・
ったく、何やってるんだよ、あのバカは・・・」
言いながら溜息をついた
それを聞いたドミニクが眉を吊り上げる
「お師匠様はバカじゃないぞ~!」
アルボアはドミニクの抗議に首を横に振って否定した
「ペリエール先生のことじゃねーよ
ドラゴンのマスターの方だ!
今、あたしの所に、あいつは勝手に押しかけてきて・・・・・・」
アルボアが言っている時だった
何かの影が素早く私たちの真上を移動した
ぐるぐる円を描くように旋回を始める
私は空を見た
ドラゴンの影がそこにあった
「アリクレール!!」
「早速来やがったか・・・」
ドミニクとアルボアは同時に言った
バサァ!
アリクレールはアルボアたちの横に広い場所を見つけて降り立った
アリクレールは大きな青いドラゴンだ
噴火騒ぎで人がいない広場だから降り立てる程度の大きさ
それに、血で濡れた鋭い歯が並ぶ大きな口
乾いた血液がこびりついている大きな爪が生えた前脚・・・
狂気を宿したオレンジの瞳が私たちを見据えている
・・・うん、無理
勝てない
ドミニクから聞いていたけど、
ディアーネさんたちみたいな英雄ネームドのためのレイドボスでしょこれ!?
私の絶望を横にアリクレールの背から見知らぬ人物が三人降り立つ
髭を生やした黒いローブの魔術師、そして看護師のような姿のシャーズの女性
もう一人は・・・・・
誰だろう?
周囲を警戒しながら降り立つあたり、場数を踏んでいる感じがした
同時に、イヤな予感も・・・
「准将殿、ルフィーアの確保の手伝いを頼んでもよいか?
報酬は出す」
准将、と呼ばれたのは後から降り立った方だ
「確保、です、か」
そいつは周囲をキョロキョロして・・・・・
ドミニクが抱えるルフィーアを見つける
そして言った
「彼女をこちらに渡してくださいませんか?」
アホかな?
後ろでみんなズッコケているし
それに准将って呼ばれてはいるけど、相手に部下がいる様子はない
アリクレールは脅威だけど・・・・・・ん?
アリクレール関連でなんかヤバイ情報があった気がした
なんだっけ、確か、アリクレールのマスターが・・・・・・
!!思い出した!!
「ドミニク!
逃げるわよ!!」
私はドミニクの後ろ襟首を掴んで港へ向かって走った
「ぐえ!?」
なんか鳥がシメられた時のような声がしたけど気にしている余裕はない
冒険者たちが避難している港なら、私たちが敵を連れて飛び込んでも大丈夫だろう
もしかしたら有名なネームドがいるかもしれない
闇の側のネームドであっても、モンタズナと不仲の勢力なら
食い合ってくれるかもしれない
「逃げないでくださいよ」
そう思っていた時期が、私にもありました
私は胴体を何かに巻き付かれてドミニクと彼女が抱えるルフィーアと一緒に持ち上げられた
見ると、植物のツタのようなものがお腹のあたりに巻き付いている
このまま地面に叩きつけられるかと思ったけど、准将は引き寄せてから素直に下ろしてくれた
正直、アリクレールと近い距離で対面したくないんだけど・・・
ドミニクは・・・・・・・・白目を剥いて気絶している
口からだらしなく舌が飛び出してるし、なんなら魂のようなものも抜けつつあった
「ちょっと、ドミニクに何てことしてくれたのよ!!」
私は准将に怒鳴った
「あ、あの・・・私、見ました
この子がドミニクって子の首のところの服を引っ張って
絞首刑のように絞めるのを・・・」
あのヒーラーらしいシャーズの女性が
おずおずと手を挙げて言った
「と、言うことは、この娘が余計なことをしなければ
ドミニクは無事だったのか・・・・・・・・」
黒魔術師が顎髭を撫でながら思案しつつ呟く
「あたしも見たよ
お嬢ちゃん、その子をシメてオとしたの、あんただったよ?」
四面楚歌
ここに私の味方は皆無だった
どうして、どうしてこんな事に・・・・・・
私はくじけそうになりながらも足を踏ん張った
それよりも、二人を守れるのは私だけ・・・・・
二人が気絶から復帰するまで時間を稼がなければならない
目の前のアルクレールのマスターが『あいつ』なら
戦闘を切り出さない限りは戦闘を始めないはずだ
最初から戦うつもりなら、不意打ちでドラゴンブレスを見舞っているだろう
そこに付け入るスキがある!
私は覚悟を決めて答え合わせをすることにした
「あなた、ガマグチヨタカなの?」
私は聞いた、相手は頷いた
以前に出会っていた頃は、いつもフルフェイスの戦闘服に身を包んでいたから
顔は分からなかったけど・・・
こいつは『ドラコ星獣』という、恐ろしい異星生命体を率いてくるのが脅威だった
でも今はそいつらはいない
そのへんに潜んでいないことを祈る
居たら、どうあがいても勝てないから(涙)
「ヴィシュナス様と連絡が取れないのだけど・・・あなたのせい?」
「違います、ジャミング発生源は恐らくボンベート山
別の部隊の作戦と推測されます
・・・彼、とはあまりウマが合わないので思考は読めません」
あっさり答えてくれた
ていうか、他に誰か来てるんだ・・・・・・
話が分かる人ならいいけど
「待て、別動隊の作戦など我は聞いていないぞ?」
モンタズナも知らなかったらしく、ガマグチヨタカに聞き咎める
「彼は大将、私よりも階級が上なので権限も上です
・・・エルセアでの暗躍といい、
私に知られるとまずいとでも思ったのでしょうかね?」
ちょっとまって
『トリカゴ』の大将クラスと言ったら3人しかいない
『三巨鳥』と呼ばれる最高位クラスの将校だ
恐ろしいのは、その戦闘力もまた最高位クラスという点だろう
そいつらの一人が来てるってこと?
てことは、さっきの噴火も・・・・・・?
「ところで、お話は終わりでしょうか?」
まずい、うっかり話を途切れさせてしまった!
かといってほかに質問は思い浮かばない
かくなる上は・・・・・・・
「わ、私だって・・・・・・
歌うことくらいはできるわ!!」
私はリュートを構えて頭の中に楽譜を思い浮かべた

(つづく)

 

解説1:襲ってきた盗賊娘

職業としての「シーフ」ではなく罪状のお話なので
ファイター・レスラーでも問題ありません

 

解説2:ドミニクの姉弟子の話

 

元ネタはカード「つらい報告」
真ん中のリーダーが鎧を脱いだ「ベング高原の僧兵」に似ていたので
このエピソードを作りました
彼の弟子には「ロベール」というネームドもいますが
公式コミックとの時系列を考え
アルボア→ドミニク→ロベール
の、順番で育成したのではないかと推測しています
ちなみに、資料によるとロベールはぺリエール師匠と意見が合わず
離れてしまったようです(汗)

ではまた

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