Monster Makers’ Conflict-第1部第3章第7話:炎の目覚め
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第1部リザレクションの序章
神様の掌の上で比較的安全な災害になっていることは
まだ知られていません
第3章:炎の帰還
////////////////////////// //////////////////////////第7話:炎の目覚め
私はリュミール、吟遊詩人だ
「みんな~!こっちに逃げて!!」
今は人々の避難誘導に声を張り上げている
突然始まったボンベート山の噴火で街はパニック状態だ
どうにか山と反対方向に誘導するので精一杯!
「あ」
「あなた、大丈夫!?」
ルフィールちゃんは目の前で転んだ女の子を助け起こしていた
「ありがとう、おねえちゃん!」
お~っと、ルフィールちゃん顔が真っ赤だ!
「お、『おねえちゃん』・・・・・?」
小さい子から『お姉ちゃん』と呼ばれることに慣れていないのだろう
って、ほほえましく眺めている場合じゃない!
「ねー、見て~」
・・・こんな時にドミニクが能天気な声で何かを持ってくる
彼女の手のそれを見て私は仰天した
「あづ~!!!!!」
彼女は持ってきたそれを今頃になって放り出す
「熱かった~!」
「熱いじゃすまないわよ!!」
さすがに私は突っ込みを入れた
転がってきた火山弾を素手で持って来る人間を見たのは初めてだ
鍛えているとはいえ、無茶が過ぎる
「お姉ちゃん大変!」
今度はベステラが走って来た
「この子、お母さんたちいないって!
はぐれちゃったみたいなの!」
ベステラが連れてきたのは
さっきルフィールちゃんが助け起こしてた女の子だ
よく見ると、彼女はヒューマンじゃない
ぽっちゃり系の女の子かとおもったけど、そうではなく・・・
「トロールか・・・珍しいな?」
ドブロヴォイ様の言う通り、この子の種族はトロールだ
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「リネア」
名前を答えた少女は不安そうにするでもなく、
キョトンとした様子で質問をした私を見ている
迷子の顔じゃない、先の見えない不安に圧し潰されそうな顔をしていない
この子は、自分を拾った私たちが自分に害をなすか否かを見極めようとしているのだ
私はさっきのベステラからの情報とその表情から何となく悟った
この子は両親とはぐれたんじゃない
最初から、いないのだ
モンスターの襲撃か何かしらの理由で親を失う子供は珍しくない
そうなると、子供たちだけで生きていかなければならない
その年齢に関係なく・・・
この冷酷非情な現実が、今のウルフレンドには吹き荒れている
この子もまた、そうして親を失い流れ流れて
ここに辿り着いたのだろう
密航は重罪で即海に叩き込まれるのが当たり前だけど
船乗りたちは荒くれ者ではあるものの決して冷酷な悪党ではない
こういった子供の密航を目こぼしする形でこっそり見逃したり見て見ぬふりをしたり
中にはわざと食料を置き忘れたりする船乗りもいる
船乗りたちはブルガンディになら生きる場所があることを知っているのだ
何故なら、彼らの中にもそうして生き延び成長した者は
少なくない数いるのだから
「もしかしたら、大氷壁の近くから逃げてきたのかもしれん」
ドブロヴォイ様は呟いた
トロールたちはかつて、神々を選ばずに北の果てにある大氷壁の向こうへと
姿を消したと言われている
『ベイオエントの帰還』を人々へ告げたのは
そこに住んでいたトロールや巨人たちが最初だったという
なら、一番被害を受けたのも彼らだろう
この子の家族も、きっと・・・・・・
「ベステラ、ルフィールちゃんも
この子みたいな子を拾いながら海に向かって
・・・できる?」
「うん、ベステラはもうお姉ちゃんだから!」
胸をたたいてベステラは応えた
「わ、私も・・・この子たちより年上だから!」
『お姉ちゃん』と呼ばれたことが効いたのだろうか
ルフィールちゃんもかわいい
「グリン、子供たちも守る、任せろ!」
オークの騎士は頼もしい
「この噴火は恐らく人為的なものだ
犯人は・・・・・・」
グリンさんたちが去った後で
ドブロヴォイ様が言った言葉に私は頷く
この前、ディアーネさんたちに打倒されて復活を阻止されたゾール
もしくはその信者だろう
噴火は徐々に収まりつつある
幸い、街の被害はそれほどでもない
それに、溶岩も山の途中で止まっている
でも、次はどうなるか分からない
今の噴火は予行演習かもしれないのだ
だから・・・
「クロワルース、ソフィア聖騎士団へ連絡を頼む
ゾールが復活しつつある、と」
「はい!」
クロワルースは即座に走って行った
「私はゾールと直接対決する
リュミールたちはルフィーアを頼む
・・・恐らく、確実に奴らは狙ってくるだろう」
ドブロヴォイ様が一人で向かうのは不安だけど
少なくとも彼は狙われていない
今、一番危ないのはルフィーアだ
まだ覚醒していないとはいえ、あの力は以前から闇の勢力に狙われ続けている
ゾールに知られたら・・・・・・
いや、すでに知られているかもしれない
だから、こっそりこのまま隠れるなり
ベステラたちに混ざるなりすれば・・・・・・・
「行きましょうルフィーア・・・・・・・ルフィーア?」
彼女は心ここにあらずという感じで
火山を見つめていた
近づこうとした瞬間
私は何かの力に弾かれて後ろに転んだ
*
*
*
あたしはアルボア、フリーの女闘士だ
突然の噴火におびえる子供たちの声を聞いて
思わず飛び出し迷子の女の子を拾って
そのまま近くの孤児院へ駆け込んだ
幸い女の子は、この孤児院に預けられている子供だった
ただ、彼女は保護者がいて、
その人物は今は用事で出かけているらしい
孤児院「リネアの家」は頑丈な石造りの建物だ
ここを建てた時に当時の聖騎士カッサンドラが多額の寄付をしたらしい
彼女もまた、「リネアの家」の出身だと伝わっている
なお、その話は『大戦』が始まるずっと前のことだそうだ
その後も増改築され、ここは一種のシェルターになっている
『大戦』の空襲にも耐えたらしい
そして街の復興を手伝ったのも、
その後に町を守っていたのも
空襲を行った『トリカゴ』の艦隊だったという
『大戦』が終わった後の戦いで
司令官と主力母艦を失った『トリカゴ』の艦隊は
ブルガンディを去った
あの『ドラコ星獣』たちですら町で暴れることもなく
いなくなったらしい
街が戦場になるのを恐れるかのように・・・
以上が孤児院のシスターの一人から聞いた話だ
オロオロする世話役らしいシスターたちの手伝いをして
子供たちを屋内に全員誘導したり捕まえて運んだりした後
あたしはすっかり上がり込んでしまった
長い話になりそうなので途中で断ろうかと思ったけど
あまりにも夢中で話してくるので断り切れなかった
おかげで、アイツがここで何をしていたかを知ることができた
ベングとブルガンディを行き来していたから何をしていたかと思ったら
そういう事か・・・
昔から、子供に優しいところがあったし
「こわいよー」
あたしは子供たちに抱き着かれるがままにされていた
正直、自分が『優しいお姉さん』に見えるとは思っていない
でも、この子たちにはゴツイ体格の戦士の あたしは
頼り甲斐のある大人には見えているんだろう
あたしだって噴火は怖い
あんなもの、死すべき種族にはどうしようもない
だけど・・・かつての あたしだった今のこの子供たちは
もっと不安だろう
「大丈夫、あたしは・・・・・」
どうにかしようと口を開いたら意外と注目を集めてしまった
「お姉ちゃんは、強いから!」
苦し紛れに力こぶを作って子供たちに笑顔を見せる
どんな時も楽しげに笑うのは、あたしの取柄で特技だ
笑顔は、誤魔化すこともできるし威嚇にもなるし
本心を隠す仮面にもなってくれた
今言った言葉も正直根拠なんて無い
前世の記憶の一部を思い出して出てきた言葉だ
それでも、子供たちの不安は若干取り除かれたのか
あたしの周囲の子は泣き止んでくれた
あたしは、覚悟を決めた
ここから、逃げない覚悟だ
少なくとも安全になるまでは
災害の混乱の後に待つのは略奪や暴動と相場は決まっている
誰も彼もが自分のことしか考えず物資を奪い合う地獄絵図
それは、今のウルフレンドでは珍しくもない
だからこそ、そいつらにこの子たちを晒したくなかった
多勢に無勢の最悪でも、あたしの鍛えた肉体は盾くらいにはなるだろう
悪魔の生贄として死ぬよりは、
この子たちのお姉ちゃんとして死ぬほうがマシだ
少なくとも人として死んで墓にも入れるだろう
*
*
*
港へ向かう途中の道
人々はあらかた逃げ終えたのか、数人が時々通過する程度になった場所で
「どうしたの、ルフィールお姉ちゃん?」
リネアは足を止めたルフィールを覗き込んだ
「体が、熱いの・・・」
ルフィールの背中から炎の鳥のようなものが出現し
どこかへ飛んでいくのを
ベステラは見た
「・・・うん、もう大丈夫、行こ!」
ルフィールはケロっとした様子でリネアに微笑むと
また歩き出した
リネアの手を取って
「グリンさん、さっきのは・・・」
ベステラはグリンへ尋ねた
「・・・きっと、ルフィーアの力」
オークの戦士は確信していた
これでもう、あの二人を無理に融合させる必要は無くなったのだと
*
*
*
ゾール神殿は混乱していた
火山を噴火させたまではよかった
しかし・・・・・
想定外の事態が起きていた
興奮した炎のモンスターたちが一斉に押し寄せて来ていたのだ
「ど、どうしたのだ、これは・・・?」
ゾール神も困惑していた
己の身に傷をつけられる存在は襲ってくる中にいない
はたいて潰せる小物ばかりだから脅威ですらない
しかし、このようなことは今まで無かった
まるで、ある意思に操られるように
モンスターたちは次々に押し寄せてきている
ドン!!
すさまじい衝撃がその場を襲った
「ちょ、銀竜、おい、止まれって、わぁ!!」
誰かが乗ったドラゴンが山頂に来た
その影が火口の中にいる一同から視認される
会話内容から、どうやらマスターの意思に反して飛んできたようだ
「は・・・・・・?」
『タカ』は、あまりの出来事に反応が遅れた
銀竜に驚いたのではない
そのマスターと思われる褐色の少年か少女かの額にある
一本の角に目を奪われたのだ
それは、『タカ』の所属する組織『トリカゴ』において
すべての種族の平等・思想の尊重を謡う組織において
唯一、上に君臨する上位種族ユニコーン族である証だ
だから、彼としたことが反応が遅れた
銀竜ヴィラフレックの口から放たれたブレスは
ゾール神もガイアーネも『タカ』も
あらゆるものを飲み込み巻き込んでいった
*
*
*
「これは・・・・・・・!?」
ドブロヴォイはボンベートの山道で、炎のモンスターに遭遇していた
しかしそれは、ドブロヴォイを無視して山に向かっていく
そんなことが幾度も起きた
やがて彼は炎のモンスターは無視して素通しするようにした
開けた場所に出て周囲を見回すと、
たくさんの炎を司るモンスターたちが次々に山に向かっていくのが見えた
「貴殿がドブロヴォイ殿ですか?」
背後からの声にドブロヴォイは振り返る
別の広い山道から馬で駆け付けたのだろう
光を司りウルフレンドに秩序をもたらす
人々に敬われる存在
ソフィア聖騎士団の面々がそこにいた
「そうだ、私が『白き館』の主ドブロヴォイだ
噴火の原因がゾール神殿にあると見て
ゾールとの対決も覚悟したのだが・・・
どうやら、我ら死すべき種族が介入する域を
遥かに超える事態が進んでいるようだな」
騎士団を連れてきたリーダーの女性は頷いた
「みんな、次の噴火に備えつつ
ゾールと闇の軍勢との合流を阻止する”にゃ”!!!」
『にゃ!』『にゃ!』『にゃ!』『にゃ!』『にゃ!』・・・
ボンベート山に、木々に、『にゃ!』はエコーする
「・・・・・・・これで、よろしいでしょうか」
「あ、ああ、うん」
キャッツアイの聖騎士シャーナは、言わなかったことにした
ドブロヴォイと騎士たちは聞かなかったことにした
社交辞令は人と付き合う上で、大事である
*
*
*
私の目の前で
ルフィーアの体に火の鳥のようなものが入っていった
ルフィーアは相変わらずぼうっとした感じだけど
その両腕を火山へと向けた
すると・・・・・・
噴煙が徐々に収まっていく
まるでルフィーアに抑えられるように
噴火の燻りが消えていく
「!!ルフィーア!」
噴火が収まると同時にルフィーアは倒れこんだ
ドミニクが慌ててその体を支え
頭を地面に強打するのを防ぐ
ふと、私はカバンの中の水晶玉を思い出して取り出した
「・・・え?」
水晶玉は、真っ黒で何も映さない
「ヴィシュナス様?」
水晶玉を揺すっても、うんともすんとも言わない
何が起きているのだろう・・・?
*
*
*
「くそっ、こんなはずじゃ・・・!!」
『タカ』はゾール神殿から飛び出すと外へ続く道を走った
ドラゴンのブレスに加えて、
何か別の力で噴火は抑え込まれていった
「舐めるなよ、『光の意思』め・・・!!」
そして坑道も崩れつつある
「・・・お前らの、『正義』の望み通りのオチなんて
させっかよ!!」
『タカ』は壁を破壊して無理やり外へと飛び出た
「こうなったら、オレ自らの手でやってやるぜ!!」
『タカ』は、飛行しながら『ヒューマンの青年』という偽装を解除した
*
*
*
噴火が収まった頃、あたしはこっそり孤児院を辞した
予想していた暴動は全く起きず
疲れたのか、子供たちもシスターも眠ってしまっている
「おねえちゃん・・・ありがと・・・」
そんな事を呟きながら、あたしの服の端を掴んでいる
あたしが助けた迷子だった子の手を
起こさないように、そっと外した
用が済んだら、なるべく早く離れたほうがいい
ここは、あたしみたいなのが居ていい場所じゃないから・・・
外に出たところで
あたしは見知った顔と鉢合わせた
「おやおや、ここにいたのかアルボア」
「グラナール・・・」
孤児院の人々を眠らせたのは、こいつか・・・
あたし以外の全員が眠ったことに合点がいった
いたのはグラナールだけじゃない
忘れもしない巨体がその後ろから前に出た
「久しいな、アルボアよ」
「モンタズナ、様・・・・・」
多分二人とも、あの大噴火を見てエルセアから駆け付けたのだろう
・・・あたしに選択肢は、無い
孤児院の人々は人質だ
あたしは両手を上げた
「・・・何をしている、ついて来い
炎の魔女を我らの仲間に引き入れるのだ」
モンタズナ様は、そんな あたしに背を向けて歩いて行く
「この事、ホ・・・・・・
ガマグチヨタカ准将は知ってるのですか?」
敢えてこいつらが知ってるほうの名前を階級付きで言ってみた
二人とも止まる
「あたし、あいつには住人を助けに行くとだけ言ってあるから
勝手にあたしを連れてくと・・・まずいと思います」
脅しではなくモンタズナ様たちを心配する口調で言う
「・・・グラナール、行け」
「え」
「・・・貴様、我に二度も同じことを言わせるつもりか?」
あたしは、グラナールに初めて同情した
まぁ、ホエイは割と理性的な奴だ
理不尽に怒ることはしないだろう
(つづく)
解説1:聖騎士カッサンドラが多額の寄付をした
「リネアの家」の卒業生の中に「カッちゃんお姉ちゃん」という人物がいまして・・・・・
彼女はきっと、転生してもずっと世話をしてくれたトロールのことを
忘れないだろうと思い、この話を作りました
解説2:銀竜ヴィラフレック
小説リザレクションにも登場しましたが
彼女はルフィーアのドラゴンであると同時に
ユニコーン族の「ハーゲン」をマスターとするドラゴンでもあります
というか、「ハーゲンの相棒」としての立ち位置が先です
(コミック版モンスターメーカー参照)
解説3:『にゃ!』
この人の口癖みたいなもののようです
当人は直そうとしているようですが直っていないとのこと
(書籍:「リザレクションRPG」キャラ設定より)
解説4:『ヒューマンの青年』という偽装
次回、『タカ』大将の正体が明らかに・・・
ではまた