Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第2話:ブルグナへ強制連行 | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第2話:ブルグナへ強制連行

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第2部:歴史の復活

今回のお話は富士見ドラゴンブック「ブルガンディ・ドリーム」を参考に
書き上げました

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第1章:ブルグナの大異変

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第2話:ブルグナへ強制連行

私はリュミール、旅の吟遊詩人だ
傷も完治したからリハビリがてら港で歌っていたら
荒くれ者に無理やり連れて行かれた
正確には
荒くれ者に騙されて歌を歌ったら、出てきたエルフの子を捕まえるための罠だった
抗議したら奴らのリーダーに酷く馬鹿にされたから
リーダーをリュートで殴り飛ばしてやった
倒れたところで馬乗りになってボコボコにして
後ろから来た連中も裏拳で黙らせたところまでは覚えているんだけど
そこから先の記憶が無い
今、船に私は乗っている
正確には、見張り付きの部屋に監禁されている
たぶん、あいつらの仲間なんだろうけど、船員はみんなヒューマンじゃない
オークだ
エルフのネームドを捕まえていたから、たぶん闇の軍団の尖兵だろう
あの荒くれ者どもの姿はない
たぶん、現地で雇われただけの使い走りだ
アリクレールを倒してモンタズナを退けたから油断していた
闇の軍団は、モンタズナだけじゃない
赤い髪の魔女ディオシェリル、黒魔術師モンドール
数多くの悪名高いネームドが、あの組織にはひしめいている
私は体力を温存すべく、出された食事を平らげると
愛用のリュートを抱きしめ眠ることにした
今は脱出の機会はないし、海の上だから逃げられない
機会が来た時のために体力を温存するのだ
*
*
*
「なんなのだ、あの娘は?」
頭に包帯を巻いたモンドールは愚痴った
彼だけではない、会議室にいる誰もが何らかの負傷をしていた
地元で雇った荒くれ者どもを使い、エルフのネームドを捕らえるだけのはずが
餌に使った吟遊詩人が思った以上に暴力的だった
ファイターの転職か転生かと疑う程度には暴れてくれた
馬乗りになって殴り続けるから弓矢で狙うこともできず、
取り押さえようとしたら今度は裏拳で顔面を抉る始末
目的のネームドを捕まえたモンドールが少し目を離している間に
荒くれ者は壊滅していた
少女と目が合ったので慌てて催眠のスペルを唱えたものの
すぐには効かずに
それが効くまで吟遊詩人の攻撃を受け続ける羽目になり
幾度か回避に失敗して負傷した
目撃していたオークたちはすっかり怯え、
一番頑丈な部屋に押し込んで見張りを交代で立てている
「モンドール、君の目的はボクだろう?
あの子は放してくれないか?」
エルフのアルルは無駄と思いつつも言ってみた
「馬鹿を言うな、縄を解いたら船を沈められるぞ」
相手の沈黙と(・・)という顔で自分が素だったことに
モンドールは気づく
「ふ、ふん、あやつは人質よ!
貴様がワシの言うことを聞かねば命の保証はないと思え!(棒)」
「この卑怯者め~!(棒)」
ものすごく白々しい棒読みセリフの応酬を
グロッコは呆れた様子で眺めていた
この魔術師は、どうもうさんくさい
『ブルグナを救う英雄にしてやる』という甘言も、どこまで信じればいいものか?
たぶん自分を単純なテンプレ通りのオークだと思っているのだろうが
とんだ勘違いだ
自分にはこの赤毛を与えてくれた母からの思慮と
敵にとっては疫病神極まりない傍迷惑な侵略者司令官が教えてくれた知恵がある
精神に影響を与える魔術も、そいつのおかげで和らげることはできた
怪しまれるといけないので少しだけ影響を残しているが
いつでもこの枷を外すことはできる状態だ
あの司令官との付き合いは思い返すと散々だった
普段、味方の甘さを糾弾するはずの自分がブレーキ役に回る程度にはアレな奴だったし
臆病な奴かと思えば意外なくそ度胸を発揮して死ぬかと思った作戦も一つ二つじゃない
リザレクションの今の時代に転生して再会したけれども、
第一声が「あなたの母親と結婚するので父と呼んでください」だった
深海で沈みすぎてとうとう本格的におかしくなったかと思ったが
今はもう赤毛以外思い出せない母親には会いたかったので利用してやることにした

母に会いに行こうと思ったことは一度や二度じゃない
ただ、彼女が『ヒューマン』だというのが最大の問題だった
オークとヒューマンの不仲は根深い
特に国を滅ぼされた件は今でもヒューマンを滅ぼしたがるオークを増やしているし
ヒューマンもまたオークを酷く嫌っていた
グロッコとしては母親以外のヒューマンはどうでも良かったが
そいつらの『攻撃対象』に母親が含まれていないことはないだろう
彼女に安全に会えて彼女の安全も保障される
何よりあの悪魔は守ってさえくれる
今のところはメリットだらけだ
*
*
*
「キミのスパニエル商団はブルガンディにもボクのギルドにも要らない
さっさと荷物をまとめて出て行きたまえ」
『追放』を宣告された男、
スパニエル商団の長アルバラードは目を丸くしてポカンと口を開けた
アルバラードは今はもう壊滅してしまった『猟犬』の元メンバーだ
『スパニエル商団』という商団を率いて資金を稼ぐ役割だった
ほぼ実家から爪弾きにされたメンバーが珍しくない中で
彼は実家との太いパイプを維持していた
商船も父親から借りたもので、理由を話したら快諾してくれた
しかし通商のため海上に出かけている間にエルセアの『猟犬』は壊滅し、
『猟犬』の永久追放がエルセアの王家から出された
エルセアに戻ることも仲間に合流することもできず
仕方なくアルバラードは商人として生活をすることにした
それまで『猟犬』に仕送りしていた資金を遣り繰りして増やして言った末に
ブルガンディでも名が売れる程度に商団は成長した
アルバラードはいつしか
自分が『猟犬』を立て直しブルガンディで再起することを夢見るようになった
この時までは

胡散臭い黒魔術師から大金を積まれて頼まれたエルフの捕縛はうまくいった
アルバラードに限らず『猟犬』はヒューマン第一主義で多種族を嫌っていたので
ヒューマン以外を誘拐する事には躊躇はなかった
しかし、誤算が生じた
利用してやった吟遊詩人の少女はオーガか何かと思える程度に狂暴だったのだ
リュートで殴られ歯が数本飛んだのを目で追っている間に地に倒され
マウントポジションで両拳を幾度も振り下ろされてボコボコにされた
仲間は用意した弓矢は自分にも当たるから使うことができず
仕方なく接近戦で挑んだものの、返り討ちにされ全滅した
彼はリュミールが幾度も死線を潜ったベテラン冒険者であり、
また肉体もある程度鍛えていることを知らなかったのだ
吟遊詩人は気絶している間に黒魔術師が連れて行ったのか
目覚めた時にはいなかった
大金は手にしたものの、いくつかを治療費として割り当てるハメになったところで
シャットからの呼び出しを受けた
シャットはシャ-ズだが、彼にまでヒューマン第一主義を当てはめるほど
アルバラードは愚かではない
『ついにあのシャットから取引を持ち掛けられるようになったか』と
喜び勇んで行った結果
シャットの館で待っていたのは期待と真逆の追放宣言だった
「な、なぜ・・・ですか、シャット・・・様!?
オレが一体、何をしたと・・・!」
シャットは馬鹿にするように笑顔で机に座って足をプラプラさせている
しかしアルバラードはそれを咎めない、咎めることも怒ることもできない
なぜなら、シャットの目は笑っていなかったから
凄まじい圧を放ちながら輝いている
明りに照らされる体毛も若干逆立っている
どう見てもシャットは怒っている、かなり本気で
しかしアルバラードはシャットをそこまで怒らせる事案には身に覚えがなかった
アルバラードの様子に、シャットはやれやれと肩をすくめてから口を開いた
「『恋だのなんだのと、甘いことを言ってるから騙されるのさ』だっけ?」
その言葉には覚えがあった
あの黒魔術師の依頼を遂行するために
騙して連れてきた吟遊詩人の少女に自分がかけた言葉だ
しかし、あの娘とシャットの間の接点がアルバラードには分からない
シャットは「本気でまだ分からないのか?」と言いたげに溜息をつく
「キミはさ、ボクが常日頃みんなに言っていることを
まったく頭に入れていないようだね?
その程度のおつむでよくここまで生き残ってこれたものだよ」
シャットは机から降りて続けた
「『吟遊詩人を馬鹿にするな、敬え、利用しろ』
商人ギルドの下働きの小僧ですら頭に入れている内容だよ?」
今はもうかつての文明は無い
情報を得る手段は限られている
それは旅人の伝聞だったり、商人同士のやり取りだったりするのだが
一番は「吟遊詩人の詩」だ
彼ら彼女らは世界各地を旅してまわり見聞きしたことを『詩』にする
だから情報が欲しい者が集まる酒場などには必ず吟遊詩人のための席は用意される
吟遊詩人が居るだけで売り上げも客入りも劇的に上がるのだから拒む店主はいない
彼ら彼女らは今の世界のニュースキャスターであり歩く新聞でもあるのだ
そういうわけで、『吟遊詩人を冷遇する』をしでかしたらどうなるかなど
想像に難くはない
特に商人には死活問題だ
良い品物を入手しても評判が悪ければ誰も来ない
信用が無ければ品物の入手すら不可能になる
情報戦略を重要視するシャットが吟遊詩人の重要性に目を付けないわけがなかった
今頃になって思い出したアルバラードだが
しかし、そんな事でここまでシャットは激怒するのかとも思った
言いつけに背いて吟遊詩人を罵倒したのは事実ではあるが
追放を言い渡されるほどではないと思っていた
まして、シャットが言い訳も許さず即追放を下すほどの怒りを買うにはまだ足りない
そんなアルバラードの疑問を見透かしたかのように、
シャットはさらにトドメとなる発言をした
「本当に知らないなら教えてやるよ
あの子はボクの可愛い妹分、さ」
アルバラードはその言葉で、納得した
ついでに思い出した、シャットの厳命を
絶対に死んでも手を出してはいけない、その少女のことを
「本当に、ずいぶん酷いことを言ってくれたものだねぇ?」
シャットの言葉はアルバラードを谷底へ突き落すのには十分だった
「やってくれたねぇ、ホント
あの子に手を出すなんて、さ?
ボクは、きちんと特徴入りの通達をしたはずだよ?
『エリミネッタ一座の歌姫には絶対に手を出すな』ってね・・・?」
告げられた事実はアルバラードに今度こそ『終わり』を理解させ
それを確信させるのには十分な内容だった
「あ・・・・・あああ・・・・・」
アルバラードはもう呻き声しか出すことはできない
どんな言い訳も理由もシャットは許さないだろう
冬の時代でもリザレクションの時代でも
商人の世界には不文律がある、それは明文化されてはいないが
破った者は確実に破滅する厳格なルールだ
そのうちの一つかつ最重要なものは『シャットを敵に回すな』だ
駆け出し時代のことを持ち出していじるだけならいい
それは慣習のようなものだし、いじられる当人含めて誰も咎めはしない
しかし、『舐める』のはまた別だ
それはシャット本人の評判に直結する
だから、『越えてはいけない一線』を越えた者にはシャットは容赦しない
まして『身内に手を出す』など宣戦布告に等しい愚行だ
しかしアルバラードは、それをしてしまった
『シャットの妹分を強引に拉致した上にオークに売り飛ばした』
こんな噂が明日にはブルガンディに知れ渡ることだろう
そうなったら激怒するのはシャットだけじゃない
『シャットの可愛い妹分の吟遊詩人』の話は以前から界隈で話題だった
しかもつい最近、ブルガンディを襲ったドラゴンと
吟遊詩人の身でありながら人々を助けながら有名ネームド戦士たちと組んで戦い
瀕死の重傷を負いつつもブルガンディを闇の軍団の手から守った、と聞いている
噂の真偽は男には分からないが、ブルガンディはあの少女を英雄として受け入れている
これが現実なのだ
つまり、噂が駆け巡ったらブルガンディの全てがアルバラードの敵になる
ブルガンディだけじゃない、キャプテン・ノーラをはじめとした
危険な海賊たちに、シャットの妹分の歌の常連にでも知れたら・・・・・?
海での商いはもう不可能だろう
怒れる商人たちは喜んで自分の居場所を海賊に提供し
海賊は見つけ次第、船を襲いに来るだろう
「何をぼさっとしてるのさ?
ボクに殺されるまで待つつもりかい?
こっちはずっと、キミを殺したいのを我慢してるんだ・・・!」
アルバラードはハッとして顔を上げ思考を中断した
冷たい瞳で睨まれ感情を押し殺した声で凄まれ、
スパニエル商団の長アルバラードは、悲鳴を上げながらシャットの館から走り去った



「さてと、次はこっちだね」
シャットは使用人に塩を撒いておくように言いつけると
鏡をのぞき身支度を整える
広間に集まるドミニクたちの前に姿を現す頃には
今のシャットは先ほどの、無礼者を叱責する彼とは
まるで別人だった
「リュミールがいなくなった」
そのことに彼女らが気付くのに時間はかからなかった
情報網を即座に駆使した結果、バカな商人一味が盗賊の真似事をして
強引に連れて言った挙句に騙し、
怒った彼女が暴れたために攫う目的だったエルフと一緒に
黒幕の闇の魔術師に拉致された、という内容を耳にするのに
一時間とかからなかった

真相はすでに知らせてある
あとは・・・・・
「すまなかった!
ボクがいながら、こんな事になるなんて!」
顔を出したシャットは一同へ頭を下げ謝罪した

(つづく)

<解説>

解説1:富士見ドラゴンブック「ブルガンディ・ドリーム」

ずっと前に出されたモンスターメーカーRPGの書籍です
今回のお話はその中に収録されているうちの一つの
吟遊詩人が主役のセッション例を参考にしました
展開はだいぶ違いますし、主人公ここまで狂暴じゃないですけど(汗)

今は実物は絶版で入手困難になっていると思います
が、幸いなことに電子書籍を確認しました
その名の通り、ブルガンディ島を舞台とした内容になっています
セッションを作りたいGMの方は是非どうぞ

 

解説2:スパニエル商団の長アルバラード

オリキャラ
名前の由来はスペイン人の探検家でコンキスタドールの
『ペドロ・デ・アルバラード・イ・コントレーラス(Pedro de Alvarado y Contreras)』
『猟犬』の活動資金を稼ぐ役割でコードネームは『スパニエル』
金儲けに興味がある上に商才を副団長『ポインター』に見抜かれ
船を与えられて商売をしていました
『猟犬』壊滅時は、たまたまエルセアを離れていたのと
『背反行為』の実行犯ですらなかったことで
幸運にも『パトロン・ミネット』の標的から外れ生き延びることができました
普通に商売を続けていれば目論見通りシャットと取引を続けるまでの成功を収められましたが
知らぬとはいえ、彼が可愛がっているリュミールに手を出したことで
すべては水泡に帰しました

 

ではまた

 

 

 

 

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