Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第5話:サンセール襲来 | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第5話:サンセール襲来

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第2部:歴史の復活

闇の軍団所属でもないのにここまで使える人材って
そうそうないと思います

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第1章:ブルグナの大異変

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第5話:サンセール襲来

私はリュミール、吟遊詩人だ
今はオークたちからの称賛を浴びている
この砦にいたのは闇の軍団だけじゃなかった
私を知っていた商人オークの船員もいて、彼からリクエストを受けて
グレードンの詩をはじめとしたオークの活躍するお話を
一通り謳っただけなんだけど・・・
そういえば、酒場で私の歌に感動し涙を流す人は
オークたちのほうが多かった気がする
もしかしたら、オークは感性がヒューマンより豊かなのかもしれない
何より、この砦のオークは共通語が話せるのが幸運だった
おかげでスムーズに喉を潤す飲み物や食べ物を頼むことができたから
それに、もう一つ収穫もあった
アルボアがここに居たのだ
偶然、近くに転生したらしいのと、友人がここに勤めているから
たまたま出くわしたそうだ
私は孤児院『リネアの家』の子供たちからの伝言を彼女に伝えた
彼女が助けた子供の名前を伝えたら酷く驚いていた
・・・私も、初めてあの子の名前を知った時は内心ひどく驚いた
あの名前の女性と私は少なくない因縁があるから
アルボアもそうだったとは思わなかったけど
*
*
*
あたしはアルボア、ベングの女闘士だ
「”お姉ちゃんありがとう、また来てね”だってさ
あたしが、だよ・・・」
あたしは、リュミールから伝えられた話を
ちょうど用事から戻ってきたホエイに話した
幾度も、自分でもにやにやだらしない顔をしていると理解しながら
「うれしそう、ですね」
ホエイはそんなあたしに呆れるでもなく
率直に感想を言ってくれた
こいつも嬉しそうな笑顔をしているのは本心からだろうと思う
「まぁな」
ついでに、あたしが助けた女の子の名前も分かった
それは、『シャールカ』
奇妙なというか、縁があるというか
『運命の悪戯』とも言える事実
さらに、ホエイはホエイで、その子を探していたという
あの子はあそこに行く以前に弟子のキーラが拾った娼婦少女ピノが拾ったらしい
少しの間保護した後でエルセアの孤児院へ預けたそうだ
ただ、未練があったらしくキーラにそれを打ち明けて
それを聞いたホエイの仲間全員で捜索に動こうとしたらしい
もっとも、そのタイミングであの事件が起きてピノが死んでしまい
『シャールカ』に手が及ぶのを危惧してホエイは捜索を一時中断
『猟犬狩り』を最優先としたそうだ
ただ、それが終わった後で孤児院を尋ねたところ
すでに『貧しい貴族』が養子として引き取った後だったとか
その『貧しい貴族』は『貧しい貴族』で、ピノのことを気にかけて助けようとしていたらしい
だからホエイは彼の出入りを許可したそうだ
「シャールカお姉様は、今度こそ幸せになって欲しいものです」
シャールカ姉ちゃん、あたしの憧れだった乙女たちの戦士の一人だ
・・・いや、年下になったんだから姉ちゃんはおかしいか?
それに、シャールカがピノの妹分ってことは、あたしにとっても妹分だ
ピノは、あたしの『妹』なんだから
いつだったか忘れたけど
転生人生の中で出会って以来あの子とはずっと姉妹だった
血のつながりとか関係なく
『大戦』で死に別れて以来、会っていないけど
キーラから転生し続けていることは聞いていた
だから、ピノにもいつかまた会えると思う
・・・あれ?
ホエイの奴も『ジェヴィーン』にいたっけ?
で、なんであたしは、こいつがいたことが当然みたいに話を・・・・・?
いや、こいつとはもっと前に出会っているような気がする
『ジェヴィーン』よりももっと昔に
たぶん、忘却した記憶の中の思い出だろう
あたしは記憶を全部覚えているわけじゃないから
「ん・・・」
あたしが話するのが余程珍しいのか
それまで笑顔で話を聞くに徹していた長老が
声を出して壁を見た
いや、正確にはその向こう側を
あたしも耳を澄ませる
剣戟の音や破壊音が聞こえた
「敵、ですね」
ホエイはそう言うと姿を消した
迎撃に行ったんだろう
「私たちも行くぞ、ホエ坊に甘えっぱなしはノルズリの名折れじゃ」
あたしは頷いた
この砦にはカオニュもその知り合いのオークたちもいる
相手がヒューマンだろうと好き勝手してもらうわけにはいかない
「お前は非戦闘員を、オークの民を守れ
ホエ坊と私で賊の主力は片づける」
長老はそう言って転移の魔術でどこかに行った
言う通り、『盾代わり』はあたしの役目だ
昔も今も、たぶんこれからも
*
*
*
「なに、すんのよ、あんた?」
私は急に出入り口から入ってきて
血に濡れた剣を振るった剣士のそれをリュートで受け止めた
私のリュートは旅に備えて頑丈にできている
武器にも盾にもなるように
吟遊詩人だからって襲われないとは限らないし
都合の悪い情報を持っている場合は暗殺者に狙われることだってあるからだ
それにこういう場面でも役に立つ
剣が切り裂くはずだった私よりも小さなオークの女の子を
咄嗟に守ることができた
「オークを庇うか、小娘?
理解できんな・・・」
剣を引きながら長髪の剣士は言った
いきなり人に斬りかかる奴のほうが理解できないし、したくもない
そんなの、前世の私を殺した『未確認生命体』どもと同じだ
「ま、待ってくださいサンセール殿!
その娘は・・・!」
剣士の後ろからやってきた男が慌てた声を出した
サンセールって言うのか、この殺人鬼みたいな剣士は
いやそれより・・・
「あんたは!
私が前にボコボコにしてやった盗賊のカシラ!?」
「ちが~う!」
私の言葉を相手は大声で否定した
「俺様は、『猟犬』が一員にしてスパニエル商団の長
アルバラード様だ!」
『猟犬』、か・・・・・・
久しぶりに聞いた名前だ
正直、寝返って協力してくれた二人以外には
悪い印象しかない
私はそれを聞き流しつつ後ろを視野で見た
私が庇ったオークの少女は腰を抜かしている
しばらく動けそうにないし
他のオークたちはパニックを起こして逃げ出したばかりだ
誰かが気付いて助けに来るまでもたせるしかない
「どけ」
サンセールは冷たく私に言った
「いやよ!」
私はリュートを盾のように構えた
「仕方ない、な」
サンセールは剣を振りかぶった
こいつはたぶん、私を殺すつもりはない
そのつもりなら、さっきリュートで受けた時にさらに攻撃しているはずだ
峰打ちで済ますか、あるいは脅しか
最悪、死なない程度にケガさせてくる可能性もあるけど
それでも引けない
「あんたのことは、メルキアで噂にしてやるわ!」
「望むところよ!
我が名が高まればこの剣も高まる!
それが悪名であろうとな!!」
誘導に引っかかってくれた、相手が私を殺す気がないという言質を取った
私が死んだら噂にする者はいなくなる
だからこいつは私を殺す事は絶対に無い
つまり、私自身があのオークの少女の盾になれる!
私は襲い掛かる剣を前に敢えてリュートを地に下ろした
「な!!?」
サンセールの目が驚愕に開かれる
慌てて逸らされた剣は私の左肩を浅く斬った
かなりの腕前だ、あの勢いのままで振り下ろしながら
私の上着を軽く傷つけるだけで済んだ
まぁ、この下に金属繊維を織り込んでるから直撃しても切れないけどね☆
「貴様、死ぬ気か!?
今のはその楽器で受けるつもりだと踏んで振るってやったんだぞ!?」
怒鳴るサンセールへ私は啖呵を切った
「あなたの腕なら、私を殺さないようにするくらい
訳ないと思ったからよ!」
「う・・・まぁ、当然だ、うん」
サンセールはまんざらでもない顔をした
挑発のつもりだったんだけど・・・?
心なしか、なんか嬉しそうだし
「サンセール殿!
そいつがリュミールです、殺しちゃいけません!!
こんなことをシャット様にでも知られたら・・・・・・!?」
アルバラードがそう言った刹那
サク!
サンセールの足元の床へナイフが刺さる
「その子から離れておくれよ、ボクがキミらを殺す前にね」
聞き覚えのある声が部屋に響いた
「残念だよアルバラード、ボクは”命だけは”助けてやるつもりだったのにさ?
こんな形になるんなら、館で始末しとくべきだったかな?」
「あ、あああ・・・・・・」
アルバラードは目を見開き脂汗を流し始める
「ボクに追放された腹いせに
戦力を雇ってリュミールを襲うだなんて
本当に、ふざけているよ」
今度は別の場所から声がした
「ち、違います、シャット様・・・!
オレは、自分の尻を拭おうと・・・!
ひいいい!!」
アルバラードは叫びながら砦のどこかへと走り去って行った
「・・・命拾いしたな、オーク」
形勢不利と見たのか
サンセールは私の後ろの少女にそう言うと
アルバラードを追いかけて奥へ去って行った
「ふぅ・・・もう大丈夫よ」
私はオークの少女に微笑んだ
オークの少女は私に抱き着いて泣き始める
「怖かったよ、お姉ちゃん!」
オークの言葉でそう言っていた
私はそっと頭を撫でてあげた
そういえばベステラが小さい頃はこうしてよくあやしてあげたっけ
「シャットさん、来てくれたんですね!」
私は天井の梁の上に声をかけた
「いや、あの、ボクはこっち・・・(汗)」
シャットさんは別方向の高いところの窓枠に居た(汗)
「リュミールお姉ちゃん!!」
出入り口からベステラが駆け込んで私をオークの少女ごと抱きしめる
「良かった!
無事で、本当に、良かったよぉ!」
そのままワンワン泣き出した
私の腕の中のオークの少女は、いきなりやってきた年上の少女に
おっかなびっくりだったけど、ベステラと私を交互に見て安心したのか
今度はベステラを撫でてあやし始めた
良い子だ
「心配かけて、ごめんなさい」
私はベステラを空いている片方の手で撫でてあげた
「大騒ぎすればシャットさんかその手下の人に気づいてもらえると思ったんだけど
まさか攫われるとは思わなくてね」
これは私の作戦だった
ブルガディ島はシャットさんの情報網の中心地だ
つまり、一番あちこちに目が届く場所だ
当然、彼の部下もあちこちにいて異変があれば知らせる手はずになっている
・・・でも、なんかシャットさんの様子がおかしい
気付いたから追いかけてきたんじゃないのかな?
いや、なんか後ろを酷く気にしているような・・・?
「なるほど、それで敢えてあの大立ち回りしたのか!
やるねぇ!」
シャットさんは後頭部を掻きながらアハハと笑った
後ろを気にしながら
「ねぇシャット、それ、どういうことだい?」
背後からの声にシャットさんが見たこともないくらい動揺する
一瞬で体毛が尻尾と一緒に逆立ち目を見開いて硬直した
さっきのアルバラードといい勝負だ
「あ、あの、その・・・」
ギギギ・・・と錆び付いた音を立てながら彼は後ろを振り返る
新しく部屋に入ってきたのは海賊風の衣装を身に着けた金髪のシャーズの女性だ
「部下に調べさせてようやく分かったって言ったよねぇ?
この子のメッセージ、見落としたって言う事かい?
あたしはあんたに頼まれて偵察を出した時、そんな話は聞いていないよ?」
<ごごごごごごごごごごごごご>
腕組みをしながら女性は凄んだ
いや、私はこの人を見た事あるし会った事もある
確か、シャットさんちで・・・
「の、ノーラの姉御、これは、その・・・」
そう、彼女は『キャプテン・ノーラ』
ディアーネさんと同じくらい古くからいるネームドで
義賊でもある大海賊
そして、シャットさんが自宅に肖像画を飾るほど敬愛する『姉御』だ
「大の大人が言い訳なんて、見苦しいよ!」
「ひぃ~!」
二人はそのまま追いかけっこを始めた
二人ともシャーズかつ有名ネームドだから身のこなしはすごい
あっちこっち壁を走ったりテーブルの下を潜ったり
天井を走り回ったり
たぶん普通のシャーズにも真似はできないだろう
私の故郷の『エリミネッタ一座』でもここまでの曲芸を咄嗟にできる人はいないだろう
「ふぇ~、すごいね」
暢気な声を出しながらドミニクが来た
さっきまで戦場みたいだったここは
完全に二人の追いかけっこの舞台になってしまった
「ノーラさんには頭が上がらないって、本当なんだね」
ルフィールの言葉にグリンさんはうんうんと頷く
この追いかけっこは、しばらく終わりそうにない(汗)
「どうしたんですか、一体・・・?」
戸惑うエルフの女性が入ってくる
彼女の面影は私のせいで捕まったエルフとよく似ていた
*
*
*
「お姉ちゃん、怖いよ・・・」
カオニュは自室に籠っていた
アルボアたちみたいに戦えないことは彼女自身理解していた
それでもできることをしようと、
子供たちの避難所として自室としてあてがわれていた部屋を提供した
カオニュは怯える子供たちを抱きしめて
歌を歌った
教わった覚えのないずっと記憶の底にある歌だ
今までは記憶を受け入れるようで口にすることも怖かったけど
そうは言っていられない
『この子たちは、私よりももっと怖い目に遭っているんだから』
記憶が入り込まないように歌だけを続けていた
「お前の歌か、エルフ?」
自分の部屋の入口から見知らぬヒューマンの剣士が入ってきた
悪鬼のようなその姿
その剣から滴り落ちる血液
向けられる殺意
子供たちの悲鳴
それは『大戦』の記憶を呼び起こし
彼女の中に『情報』が入り込む隙間を作るのには十分すぎた

(つづく)

<解説>

解説1:サンセール

手元の設定資料にあるリプレイ用シナリオにも出ていましたけど
なんなんでしょうね、この人は?(汗)

解説2:キャプテン・ノーラ

やはり「シャット」と言えばこの人だろうということで
いつか出す予定でした
なので今回、満を期して助っ人として参戦
海賊団の姉御として一肌脱いでいただきました
設定資料で確認したところ
シャット成長後の今も二人の関係は変わらないようで
安心しました

 

ではまた

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