Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第8話:絡みつく過去 | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第8話:絡みつく過去

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第2部:歴史の復活

過去の一端が明らかになります

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第1章:ブルグナの大異変

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第8話:絡みつく過去

私はリュミール、『大戦』で恨みを買ったらしい相手と
時を経て対峙している吟遊詩人だ
「覚えていたのね、カオニュ」
私はそう呟くしかなかった
いや、それしかできなかった
今まで生きてきて、これほど強烈な殺意と憎悪をぶつけられたのは
初めてだったから
カオニュはこっちに飛びかかろうとしている
姿勢から判断したけど、間合いが遠い
「おい、遠くても油断するな!
そいつは自分に糸を打ち込んで無理に動かしているんだ!」
サンセールが声をかけたのと同時に
カオニュが飛びかかってきた
「ふぇにぃきぃすぅううううう!!」
私の前にドミニクが飛び出してカオニュを防ごうと・・・
「だめだ!」
したところでシャットさんが咄嗟に足払いをかけて彼女を転倒させる
「ちっ・・・!」
同時にナイフ捌きで空中の何かを切断したのが分かった
ただ全部はやりきれず、シャットさんの左腕に傷が生じる
「う・・・うわあ・・・」
ドミニクは空中で切断された自分の前髪数本を見た
もし、シャットさんが助けに入らなければ深手を負っていただろう
「これは『斬糸』の類だ、使い手は限られるから遭遇頻度は高くないけど
油断できない武器だよ」
それにしてもシャットさん、結構強い
さすがシーフの頭目と言ったところだろうか
一方でカオニュは後ろに跳んで距離を取る
赤く染まった糸を操り血を滴らせながら
「逃がさない、許さない、よくも私を、みんなを・・・・・・」
彼女は私を睨みながら凄まじい形相で呟いた
ぞっとした
まるで悪鬼だ
私はあの未確認生命体からですら、ここまで執拗な狙われ方をされていない
向こうではアルボアとサンセールが剣戟をしているから
アルボアまでこっちに来ることは無さそうだけど
彼女の仲間がいつ加勢に来るか分からない
「あのさ、リュミール・・・・・・あの子になにしたの?」
転倒した姿勢のままドミニクは恐る恐る聞いてきた
「それは・・・・・・」
私が意を決して口を開いた刹那
「前世のことでしょ、だったら言わなくてもいいよ」
シャットさんがそう言ってくれた
「今のウルフレンドは、こう言ったことがあちこちで起きているらしいんだ
誰もが前世の記憶を受け入れられるわけじゃない
壊れちゃう人だっているんだ・・・
あの、カオニュって子もその一人なんだろう」
シャットさんは左腕の傷を舐めると血を地面に吐き捨てた
「ボクらは、光の勢力は、
ああいう子も救わなきゃいけない!
だからリザレクションを推し進めるんだ!
リザレクションがある程度進めば、転生はまた元のように緩やかになるはずさ!」
そして言いながらナイフを構える
「あの、全く身に覚えないんですけど・・・?」
「え?」
キメたところで意外な事実を出されて
シャットさんは顔面崩壊しながら手からナイフを落とした
本当だ、『カオニュの乱』で顔合わせはしたけど
ここまで恨まれることをした覚えはないし
むしろ、向こう・・・正確にはカオニュたち『ノルズリ』と組んでいた
『トリカゴ』の司令官にやられた被害のほうが大きい
ツチラトの話だと彼の友人だった新米領主がなんかの理由で捕虜を殺した挙句に
停戦の紙を破って捨てたそうだ
その後でツチラトの説得もあって停戦合意する事にしたそうだけど
停戦の紙を破った事実を知った『トリカゴ』は攻撃を開始
領主は崩壊する城と運命を共にすることになった
その司令官=ガマグチヨタカとは後日、
空母が単独行動してるところに遭遇して決着を付けたけど
「何もしないでここまで恨まれるわけないでしょ?」
ドミニクが私に疑わしげな視線を送る
本当に身に覚えないんだってば!!
「やれやれ、ホエ坊のところよりも
こちらの方が厄介そうじゃな」
壁をすり抜けてアルボアよりも濃い褐色肌の少女が入ってくる
ちょうど、私たちとカオニュの間に立つ形で
「あ、あなたは・・・・・・」
「覚えていてくれたか、この私を」
堂々と胸を張りドヤ顔をかます見た目は10歳くらいの少女には見覚えがある
確かノルズリの、カオニュが率いていた部族の長だ
いや、そんなことより・・・
「なんで裸なの?」
そう、それだ
ベステラが指摘した通り
ノルズリの長は一糸まとわぬすっぽんぽんだった
「・・・・・・・・・・・・」
長はまた壁に引っ込むと
衣装を身に着けた状態で同じ側のドアを開けて入って来た
「やれやれ、ホエ坊のところよりも
こちらの方が厄介そうじゃな」
今のこと無かったことにする気だよこの人!!?
「覚えていてくれたか、この私を」
ノルズリの長は私がまだ何も言っていないのに
言ったかのように続けた
「キミさ、その年で露出狂はやめなよ」
空気を読まないドミニクの口撃が刺さる!
「わざとではないぞ、私の体には隠すようなものなど何もない!
ゆえに全裸でも問題はないのじゃ!!」
言い訳にしては苦しすぎる
素直に『服だけ壁抜けに失敗した』と言えばいいのに
「私は覚えているぞ、リュミールとやら?
貴様らがしたことを・・・・・・・
我が夫を乗艦もろとも海の藻屑にしてくれたそうだな?」
・・・『覚えているぞ』と言ったくせに口調が『人伝に聞いたお話』なんだけど?
あと、今までそんな話だったっけ?
そういえば、ノルズリの長とガマグチヨタカは婚姻関係とか聞いた記憶がある
でも、今はそんな話はしていないしアレはノルズリが滅んだ後の話だ
私はノルズリの長が言い出したことが明後日の方向過ぎて目が点になった
「・・・そのついでに、お前たち『フェニキス』のせいで・・・・・・
『フェニキス』と組み我らを疎んじた姉の『ヴェストリ』のせいで
我ら『ノルズリ』は滅んだのだ!」
そっちが『ついで』で良いの族長さん!!!?
むしろメインでしょ!!?
壁抜け失敗を誤魔化す意図を隠そうともせず重要な話題を切り出すにしたって
言い方ってものがあるだろう(滝汗)
「覚えていないのなら、教えるまでよ!!」
長は杖を掲げて私たちに情報を流し始めた
あの時、『大戦』が終わってしばらくしてから
『フェニキス』は敵対しているはずの『ヴェストリ』からの情報で
一時的に共闘する形で『ノルズリ』の浮遊城へ
少数精鋭の部隊を送った
姉である『ヴェストリ』の長の手で『ノルズリ』の長は殺され、
主だったメンバーも壊滅した
カオニュもその場にいた
彼女は降伏も脱出も拒んで隔壁を下ろして自分を閉じ込め
崩壊する浮遊城と運命を共にした
部隊が脱出後に浮遊城は崩れながら海に沈んだ
他の『ノルズリ』の民も全員、浮遊城から出てくることは無かった
『フェニキス』と戦うために『ノルズリ』を最悪のタイミングで巻き込んだ上
その暴走を恐れて滅ぼした『ヴェストリ』は
その後で『ノルズリ』とつながっていた『トリカゴ』に報復されて滅んだ
で、『ヴェストリ』を滅ぼすために単独で行動していた
帰り道のガマグチヨタカ艦隊と私と仲間は遭遇し壊滅させたというのが流れだそうだ
「(=ω=;)キミがすっぽんぽんで出てきたことを
誤魔化すにしては壮大すぎるお話だと思うよ?」
シャットさん、ノーラさんに怒られるのたぶんそういうとこですよ?
私でさえ口に出すのやめてあげたのに
「ええい、うるさいうるさいうるさい!!」
とうとうノルズリの長は癇癪を起して地団駄を踏む
見た目のせいでまるきり子供だ(汗)
それにしても・・・・・・・
『ヴェストリ』は確かクロワルースの部族だ
彼女はアルボアと仲が良かったと聞いている
私は当時は顔を合わせたことがない
向こうは私が元『フェニキス』だと知らないのだと思って黙っておいた
・・・後でいろいろ話し合う必要がありそうだ
カオニュは、長が出てきてからじっと佇んでいる
心ここにあらずという感じで
*
*
*
あたしはアルボア、ベングの女闘士だ
カオニュが飛び出して行ったのを追いかけたいけど
サンセールが邪魔をしてくれた
「お前の相手は我だ、ちょうど一対一だな!」
「どけよ・・・!!」
あたしは焦った
カオニュの具合は予想以上に酷い
手足に糸を絡めて操り人形のように自分を操作しているんだろう
サンセール相手に渡り合えたのも、それで身体能力を補ったからだ
けど、カオニュはあたしやサンセールみたいに鍛えちゃいない
長老の話だとこの砦に来る以外は小屋で寝起きしてるみたいだけど、
ろくな運動はしていない
食事だって最近はあまり食べていないことを長老から聞いている
そんな状態で無理にネームドレベルの動きをすれば
肉体がもたない
木の棒は鋼の剣の代わりには絶対にならないように
あたしやサンセールがこういったことができるのは
鍛えまくっているからだ
それも日々欠かさずに
鍛えるどころか運動すらしていないカオニュが同じ動きを無理にでもすれば
骨も筋肉も血管も急な酷使に耐えられないだろう
今のカオニュは心だけじゃなく肉体もあちこちぶっ壊れているはずだ
今すぐにでも目の前のサンセールを斬り倒して止めに行きたい
殴ってでも止めないと、カオニュは・・・・・・・!
「・・・っ!」
サンセールの一撃が左の頬をかすめて
その痛みであたしは冷静になった
相手は剣豪を名乗るだけあるし前にあたしを殺してる
あたしが一番避けなきゃいけないのは、『カオニュの目の前で死ぬ』ことだ
それが起きたら、今度こそ確実にカオニュは壊れる
それだけは絶対にダメだ!
なら、あたしがすべき事は・・・
あたしはサンセールの攻撃を受け、かわし、いなしながら
徐々に後ろに下がった
やがてあたしの背は壁についた
「これで終わりだ!
他者に気をかけすぎたのが貴様の敗因よ!」
あたしが切り替えたのを知らないままサンセールは大上段に剣を振り上げる
ついでに、ここがどういう場所か失念したまんま
ガッ!
「!?しま・・・!?」
ここは屋内だ、外とは違う
壁もあるし通路も部屋も梁もある
それにオークの性質なのか、気まぐれに拡張しまくったでたらめな工事で
天井が急に低かったり行き止まりの通路があったりめちゃくちゃな構造だ
だけど今回はそれを利用させてもらった
サンセールは、あたしが低い梁の下に移動していたことに気づかないまま
追い詰めた気でいた
そして、あたしの狙い通り梁に剣を引っかけた
剣は木でできた梁に半ば以上にまで食い込んでいた
・・・・・うん、これは予想外だ
あと少しサンセールに力量があったら、あたしは梁ごと真っ二つだった
でも目論見は成功した、これなら簡単には抜けないだろう
反撃開始だ、あたしは剣から手を放して拳を振るった
「ちぃ!」
サンセールは剣から手を放して飛び退いて
あたしの右拳を寸前で回避する
あたしは両手剣を二本、片手で一本ずつ扱える
それができるだけの膂力は打撃も優秀だ
あたしは左腕に装甲を付けて右手のグローブにもナックルに金属をはめている
両足のブーツも鉄板仕込みで装甲がある程度施されている
剣が振るえない狭い場所でも問題なく戦えるように
それに・・・あたしは笑みを浮かべて構え、告げてやる
「あたしは剣士じゃない、”闘士”だ」
あたしは剣術でなく格闘こそが本領発揮できるファイターだ
サンセールは剣の鞘を腰から抜いて構えているけど
相手が武器を持っていることを想定しない鍛え方なんてしていない
貴族や有名ネームドみたいな上品な戦い方はあたしの流儀じゃない
転生を繰り返して地獄を這い回って得られた
相手を手段を問わず叩き伏せて踏みにじり
生き残るための格闘術
それが、あたしの流儀だ
その上、サンセールは身軽さを重視した軽装だ
直撃すれば、ほぼ生身であたしの拳を受けることになる
目や鼻といった急所に食らえば再起不能は確実だろう
残念ながら、あたしはそれに配慮する良心は持ち合わせて無い
「くそっ・・・!?」
サンセールはナイフを出してきたけれども、剣とは勝手が違うのか
あたしのかなり手前で空振った
この土壇場で意表を突くのは感心するけど
あいにく、使い慣れていない武器なんて怖くない
あたしは装甲に守られた左手でナイフを払いのけて後ろに飛ばしてやった
隙だらけの腹に強烈な右の蹴りをお見舞いすると
サンセールは吹っ飛んで動かなくなる
死んじゃいないだろうが、口から血が出ている
あの色は内臓がやられているだろう
もう激しい動きはできないはずだ
さて、お次は・・・・・・・?
カオニュに加勢しようと思ったら
いつの間にか長老が来ていた
何が起きたのか、地団太を踏んでわめいている
カオニュは・・・・・ぼうっとした感じで佇んでいた
「あ、アルボア・・・・・・勝ったんだ」
「っ・・・カオニュ!!」
あたしは慌てて駆け寄ってカオニュを抱きしめた
ひどく冷たい、血を流しすぎているのが分かった
手遅れなほどに・・・・・
「畜生、なんでだよ・・・・・・!」
あたしは心の底から運命を呪った
カオニュが何をしたというんだ
なんで、こんな目に遭わなきゃ・・・・・・!
「アルボア、泣いてるの?
あいつにやられたの?」
カオニュは、こんな状態なのにあたしの心配をしてくれた
「!だ、大丈夫、あいつはやっつけた!」
あたしはカオニュにこれ以上無理をさせないように笑顔を作って言った
「ぐ・・・アルボ・・・あぎゃ!!?」
サンセールには悪いけど今はまだ寝ててもらう
倒れてる方向を見ないまま転がっていた大きな石を蹴飛ばしたら
鈍い音がしてサンセールは沈黙した
あたしは悪くない、声を出したあいつが悪い
「良かった、私、今度こそ守れたんだね
子供たちも、アルボアも、みんなも・・・・・・」
それだけ呟くとカオニュは目を閉じた
あたしは族長を残してそっと場を離れる
悪いけど、カオニュを連れ帰るのが先だ
子供たちと約束したんだから

(つづく)

<解説>

解説1:壁抜け失敗

族長様にドジっ子属性が確定した瞬間
今後もちょくちょくやらかす予定

 

解説2:アルボア勝利

彼女のカードデータが手元にある方はわかると思いますが
彼女はレベル4キャラにしては強いほうです
相手がディアーネ姫とかの強力なネームドだったり
状態異常とかかけてくるような相手だと分が悪いですけど
単純殴り合いになれば、かなり有利
鍛えられた肉体は伊達ではない、と言うことです
(アルボア「うん、説明、これならいいよ」

 

次回、沈黙していた重鎮が動きます

 

ではまた

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