Monster Makers’ Conflict-第2部第1章第9話:闇の首魁
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第2部:歴史の復活
闇の重鎮が動きます
////////////////////////// //////////////////////////第1章:ブルグナの大異変
////////////////////////// //////////////////////////第9話:闇の首魁
私はリュミール、ノルズリの族長と対峙する吟遊詩人だ
いつの間にかサンセールと決着をつけたアルボアはカオニュを連れて去って行った
ミューザ族長はまだ気づいていないようだけど・・・・・・
教えたほうがいいかな?
「まぁ良い、まぁ良いわ・・・・・
ひとまず、ここで恨みを晴らしてくれる!!」
ミューザは金細工が施された豪奢な杖を構える
「気を付けて、ミューザは恐ろしい呪術師よ!」
私は『大戦』の記憶を思い出した
彼女は禁忌の術すらも平気で使う
前に出会ったあの、『トゥレーヌ』という死霊術師の少女のように
「そこまでだ」
大声ではないけど、そこから響く威厳に満ちた声がした
ミューザは呪文詠唱を中断し不満そうな顔をそちらへ向ける
暗がりに何かが出現する
ガンダウルフ様に似た風貌の、黒い魔術師が現れる
「あなたは・・・・・・・!」
ルフィールちゃんは彼を知っているのか、驚きの声を上げた
「・・・何用だモンドール?
私の復讐を手伝うという約束ではなかったのか?
我が夫はすぐそこにいる、頼めば即座に駆け付けるぞ?」
低い声でミューザが咎める
それを受け流し黒魔術師は口を開けた
「久しいな炎の魔女・・・・・
いや、お前はその欠片から生じた娘の方か」
黒魔術師モンドール、『闇の軍団』を統べる存在にして
『闇の騎士団』の主
ベステラは、震えながら私にしがみついている
この子は、とても敏感な子だ
モンドールの放つ『気配』に当てられたのだろう
「お、お姉ちゃん・・・・・」
私はベステラの頭を撫でると背後に庇い、モンドールを睨んだ
「アルルさんのお兄さんはどうしたの?」
その言葉にモンドールはキョトンとした
そして直後に爆笑した
「お前は本当に面白い娘よ!
この状況であのエルフめの心配とは・・・・・
案ずるな、用が済んだから解き放ったわ
今頃は片割れと再会している頃だろう」
私はほっと息を吐く
まぁ事態は好転したとは言い難いけど
人質を取られた状態で戦うよりはマシだ
「モンドール、また悪さを企んでいるのか?」
シャットさんが睨みつけながら厳しく問いかけた
「悪さ、か・・・・・
お前たち光の勢力は、いつもそうやって闇を『悪』と決めつけるが
その価値観が本当に正しいものなのか
疑問に思うことは無いのか?
もっとも、だからこそ我らは常にどの世でも争っているのだが・・・・・」
私はモンドールの言葉に、アルボアを思い出した
正確にはルフィーアから聞いたアルボアのことを
『彼女は・・・善でも悪でも無かった
ただの、ただ生きていたいだけの
この世界のどこにでもいる
死すべき種族の戦士だった』
あの時、今は息子を探す旅をしていてこの場にいない
ドブロヴォイ様も言っていた
『この世界は善と悪や光と闇
その二元論だけで割り切れるほど簡単ではないのだ
誰であれ善にも光にもなる機会はあるし
悪にも闇にもなるきっかけは存在する』
私は考えた
モンドールは悪なのか?
少なくとも、アルルさんの兄を攫ったことは悪事だ
でも、私と対話した時や私への扱いは・・・・・・
「迷っているな、リュミールよ?」
モンドールは沈黙していた私を見透かしたように問いかける
「アルボアについて考えていただけよ」
うっかり私は言ってしまった
モンドールの目が点になる、想定外だったらしい
まぁそりゃそうだろう
関係ない第三者の名前をいきなり場に出したのだから
しかも誤魔化しでも嘘でもないと、『魔術師』だからこそ悟ってしまうだろうし
「お姉ちゃん、アルボアって人となんかあったの?」
ベステラの私にしがみつく力が強くなった、痛い!?
それに声も心なしか『圧』を感じる
「ほ、ほら、あの人って光も闇も関係ないって
ただ生きていたいってごく普通の人の出身だから・・・」
これも素で言ってしまった
モンドールはそれが本音と分かるからこそ・・・・・
余計にキョトンとした感じになっている
そして彼は・・・爆笑した
「愉快、実に愉快よ!
汝の返答は光にあらず、さりとて闇にもあらずだ!
久々に爽快な問答であった
その善き娘はお前たちに返すとしよう!」
モンドールは何やら満足すると踵を返した
「リュミール、大氷壁へ向かえ
兄の方のアルルが見聞きした全てはそこにあるぞ!」
モンドールはそう言って、暗がりに消えた
「あ、待て!」
シャットさんが投げたナイフは当たる事無く
カコッ!
「・・・・・・(涙)」
ミューザの杖に刺さった
ちょうど顔面のすぐ横の位置の高さだ
「あ・・・・・・(汗)」
うん、シャットさんはわざとじゃないって分かるよ
でもね、女の子にナイフ放り投げたのは弁護できないからね?
「ふ・・・・・・み、見たか!
貴様の不意打ちなど私には効かぬわ!」
ミューザ、涙拭いてから言ってよ
鼻水まで出てるし(汗)
「・・・な、なかなかやるじゃないか!
さすがノルズリ族の長だ~」
シャットさん、お気遣いしてるの分かるけど
棒読み棒読み!
あと二人とも足が小刻みに震えてるし!
「わ、私は引き上げる!
決して怖くなったからでも漏らしてしまったからでもないぞ!」
漏らしちゃったんだ・・・・・・
言わなきゃバレなかったのに・・・・・・
「その・・・・・なんかごめんなさい」
私は思わず謝罪した
「いやいや、ナイフ投げたのボクだからボクが100%悪いよ
ごめん・・・」
シャットさんも頭を下げる
私たちが顔を上げたときにミューザはそこに居なかった
「あの子、泣きながらすごい勢いで走って行っちゃった」
とは、目撃者のルフィール氏の証言である
「じゃ、アルルたちと合流しようか」
サンセールを縛って地面に放置してから
私たちはシャットさんと一緒に続いた
サンセールの事は砦のオークたちに任せよう
さすがにこいつがしでかしたことは庇い切れないし
その気も湧かない
それに連れ歩きでもすれば仲間と思われて私たちも狙われるだろう
気の毒かもしれないけど自業自得だ
*
*
*
サンセールは目を開けた
体のあちこちの痛みとともに敗北の経験を思い出す
「アルボアめ、このままでは済まさん・・・」
かつて会得した『縄抜け』で自身を縛る縄を外し
梁から落ちたのか地面に転がっている剣を鞘に納め
それを杖代わりにサンセールは歩き出した
音もなく慎重に
今この状態でオークに見つかれば勝ち目はない
ここやブルグナの村々でしでかした事を考えれば
捕まったら死ぬより酷い目に遭わされることは確実だった
先に逃げたアルバラードの行方は分からない
捕まったか殺されたか・・・
ひとまずここから逃げて砦のことを伝えよう
闇の軍団と結託したオークの前線基地だ
ヒューマンの軍に動いてもらうに十分すぎるものだろう
サンセールは黒い報復の炎を内で燃やしながら思った
背後からそっと彼を尾行する影に気づかないまま
*
*
*
カオニュは今、すごく安らかな顔で眠っている
正確には死んでいる
棺はオークがすぐに用意してくれた
花も子供たちがすぐ集めてくれた
リザレクションが始まったとはいえ、花を集めるなんて大変だろうに
ましてや、ここは痩せた土地のブルグナだ
よくここまで集められたものだと思う
「遅かった、か・・・」
遅れて長老が到着した
涙の跡が目元にあった
・・・泣いてくれたんだろうか、そう言うことにしておこう
下履きがさっきと違う気もするけど・・・
長老は何やら呪文を唱える
するとカオニュから出てきた白い光が長老の胸元に入り込んだ
「疲れたろう、カオニュ、ゆっくり私の中で休め・・・」
どうやらカオニュの魂を中に取り込んだらしい
少なくともこれで、カオニュはもう苦しむことは無いだろう
「カオニュおねえちゃん、今までありがとう」
ヒューマンの言葉で、あの一番年上のオークの少女がお礼を言ってくれた
あたしは、カオニュはこれだけでもかなり救われたと思っている
あの子は、事切れる前に笑っていた
あたしの無事を確認して
「カオニュは、ずっと気に病んでいた
我らを守り切れなかった事も
反乱に巻き込んだ事も、な
あの子を守るのは我らがあの子の両親と交わした約定
反乱も、むしろ我らが巻き込んだ側なのだというのに・・・」
ふと、あたしは仲間たちを思い出した
みんな、転生したのだろうか?
だとしたら今頃、どこで何をしているのだろう?
「ところで、ホエ坊はまだ戻っていないのか?」
そういえば、あいつの事をすっかり忘れていた
・・・おかしい
あいつは、あたしにべったりしたがるはずだから
長老より先に戻ってきてもおかしくないはずだ
「許せねぇ、俺たちが何をしたってんだ」
「ヒューマンめ・・・」
当たり前なんだけど、オークたちはサンセールの襲撃で犠牲者を出したのもあって
ヒューマンへの怒りを煮え滾らせ始めていた
「まずいな、すぐにでも攻め込みに行きそうじゃ」
この砦にいるのは、ほぼ難民だ
女子供も年寄りも多い
ケフルと戦争になったら勝ち目はないだろう
かと言って言って止められるような状況じゃ、もうない
あたしだってカオニュを殺されて、同じ気持ちだ
でも、堪えて居る
悔しいけど、あたしたちじゃケフルには勝てない
・・・ずっと昔からそうだった
大きな力は、権力のある奴は
容易にあたしたち民草から大事な人や財を奪っていく
英雄譚に語られる『悪徳領主』に搾取されるのが、あたしたちだ
そして英雄の活躍は描かれても、あたしたちの行く末までは詳細には描かれない
あたしたちは英雄が活躍する”舞台装置”程度の扱いでしかない
でも、でもな・・・!
「行くとなったら、あたしも行く」
あたしは言った
カオニュを、大事な妹分をこんなんにされてまで引っ込められる刃を
あたしは持っていない
それにあたしが行けばどうにかなるかもしれない
卑怯だけど、ホエイを利用させてもらう
あいつは自身が強力な戦士で、今はドラゴンを従えている
あいつを巻き込めば、勝ち目はある
「ただいま戻りました、『猟犬』の残党以外はいない模様です
例の剣豪には部下を尾行させておきました」
きっちりと報告しながら、あたしが頭に浮かべた当人が戻ってきた
「ホエイ、見てくれ
あたしの妹分だ・・・・・仇を討ちたい!」
あたしはカオニュの棺を見せて言った
「よく言った!」
「アルボア、お前はヒューマンだが我々の仲間だ」
「ヒューマンにしておくにはもったいない女よ!」
共通語の分かるオークが口々に言った
「”灰”にしてくるように部下に命じてありますから
撃って出る必要はありませんよ」
その熱意に冷や水をかける発言を、さらっとホエイは言ってくれた
一瞬で場が沈黙する
「その~、”灰”って・・・・・?」
オークの一人が質問をする
「文字通りの意味です」
ホエイはあっさりと答えた
「あの剣豪は相当な深手です
すぐにでも拠点に戻り仲間と合流したいでしょう
だから、まっすぐに最短距離で拠点へ帰還するはずです」
とホエイは笑顔で続けた
「そこが拠点でそこにいるのが襲撃者の仲間と判明次第
その場の判断で殲滅する手筈になっています」
こいつ、そんなに戦力持っていたかな?
かと言ってハッタリ言うような雰囲気じゃないし?
「お前、何人送ったんだ?」
あたしは思わず聞いた
「私の弟子と子供・・・長女と長男の二人、合わせて三人ほどを」
「なんじゃと!?」
長老が驚いた声を出す
「ホエ坊、そこまでする必要あるまい
たかがヒューマンの砦か街なぞ、長女のケィード一人で余裕で踏みつぶせるじゃろ?
なのにリィードともう一人付けるなどと、明らかに過剰戦力じゃ
・・・本当に、灰しか残らなくなる・・・・・」
ホエイは弟子の他に何人か養子を育てているとは聞いている
長老は、そのホエイの子供らと面識がある
『姉兼妻』を自称してるくらいだからあいつの身内と顔合わせ済みなのは当然だろう
ただ、『一人で街を踏み潰す』とかいう表現がなんかおかしい
怪獣でも養子にしてるんだろうか、このあんぽんたん?
「ですが、脅威は早いうちに確実に叩いて潰して焼くべきかと」
長の反論をさらっと受け流し『これが当たり前』と言いたげにホエイは言った
そういえば、こいつはこういう奴だったと今更ながら思い出した
当たり前だけれど、血気に逸っていたオークたちは急速にしぼんでいった
「俺たち、何もそこまで・・・・・」
恐る恐るという感じでオークたちは呟き始める
「?」
ホエイはオークたちの反応が意外なのか神妙な顔・・・・・
いや、こいつ理解できてない顔だこれ!?
「ホエイ、今から子供たちを呼び戻せねぇか?
無理ならせめて街を焼くのだけはやめさせるとか」
あたしはオークたちの意を汲んで提案した
「よろしいのですか?
あの子たちなら確実に”更地”にできますけど?」
それが駄目だっつってんだよ!?
カオニュの仇どもは憎いけど、そこまでの大規模な破壊なんて
あたしたちは誰一人として望んでいない
頼んですらいない
「仇は討ちたいけどさ、ほら
それだと無関係の連中が大勢巻き添えになるだろ?
それは、あたしたちの望みじゃねーんだ」
怒鳴りつけて殴りたい衝動を抑えながら、あたしは説得してみた
ホエイは少し考える仕草をした後で
「一理ありますね、了承しました」
あたしはオークたちと一緒にホッとした
こいつの部下の苦労が伺えるよ全く
作戦立案の度にこんな光景が幾度となく繰り返されてるだろう事は
想像に難くない
「・・・おや?」
ホエイが水晶玉を取り出した瞬間に向こうから連絡が入った
応対しているのは、ドミニクの服装に似た衣服の青年だ
こいつは知っている
確か、ホエイの弟子の『シャオリュウ』とかいう名前だったかな?
「提督、指定された目標がありません
サンセールの行き先はすでに殲滅されていました」
とんでもない報告を送ってきた!?
「どこの誰に恨みを買ったのじゃ、あのバカ剣豪は?」
ミューザ長老は頭を抱えて溜息をついた
「よいわ、我らはこの砦を離れよう
カオニュも安全な地で弔わねばならん」
「了解、全員帰投しなさい
作戦を練り直します」
ホエイは部下に指示を出すと水晶玉をしまいこむ
「そうそう、忘れるところだった
アルボア、モンドールがお前にと報酬代わりに寄越した戦力がいるぞ
後で引き合わせよう」
その戦力が誰なのか問い返すほど、あたしは頭は悪くない
あたしの子供のうちの一人とは割と早いうちに再会することになったようだ
(つづく)
<解説>
解説1:痩せた土地のブルグナ
どうしてこうなったかは『大戦』よりも遥か昔の
神々の昇天の時期まで遡ります
当時、神々が天に昇る前に死すべき種族へ
どの神を崇拝しウルフレンドのどこに住むかを決めるようにしました
ところがその際にヒューマンはゾール神へ贈り物をし
肥沃なメルキアへ居住できるように便宜を図ったのです
結果、その要求は通され割を食う形で
オークは広大であるものの痩せた土地のブルグナへ居住することになりました
なおオークの国は『大戦』で完全に滅ぼされてしまった模様
解説2:シャオリュウ(少劉)
オリキャラ
パトロン・ミネット艦隊幕僚の一人で現在階級は少佐
キーラの弟弟子、気功や拳法を主に使う道士です
まだ道士なのは『仙人に昇格すると弟子を取らなきゃいけなくなる』
=『自分の修行時間が減る』という封神演義の楊戩と似た理由で
元々は『トリカゴ』侵略先の国の皇子
政治的都合で殺されそうだったところを
ガマグチヨタカの弟子になることで助命された経緯があります
名前と生い立ちの由来は三国志の少帝陛下から
ではまた
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