Monster Makers’ Conflict-第2部第2章第2話:クロワルースの事情 | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第2部第2章第2話:クロワルースの事情

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第2部:歴史の復活

筆者が推しなので
シャットさん活躍成分多めです

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第2章:浮遊城戦争、勃発す

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第2話:クロワルースの事情

「ま、待て、待ってくれ!!」
ゴブリン王の討伐を依頼したゴブリンの男は椅子を蹴飛ばしてしまい
そのまま尻餅をついて後ずさる
目の前には、鋭い眼光で威圧するシャーズの青年
「キミさ、オレを知らないで依頼を出したのかい?
それとも、オレを馬鹿にするつもりで仕組んだのか?」
怒鳴りつけたりはしないものの、静かな声で怒りに輝く瞳で射られ
男は動けなくなった
どうしてこうなったかというと
フードを被って顔を隠した『リュミールの代理人』に対し
依頼主の男が『報酬の値切り』を言い出したからだ
その理由は『王冠に傷がついていたから』
ようは、言いがかりである
保存状態の良好な品物が出ればそれだけで奇跡なのが古代の発掘現場だ
傷のない発掘品など人間一人一生分の運を
その場で使い切ったとしても引けない大当たりに等しい
難色を示されるのは分かっているが、男には一応の勝算があった
男はシーフであり、末端とはいえ、この地のシーフギルドを束ねる立場だ
いざとなれば一声かけるだけで仲間が集まる
相手の冒険者がいくらベテランでも数で押せば勝ち目はない
そう思っていた
この時までは
相手がシャットだと知っていたら絶対にやらなかった
例えるなら、男は子会社の社長に過ぎないがシャットは関連企業を束ねる会長だ
ようは、男は知らないうちに自分が所属する組織のトップへケンカを売ってしまったのである
男が集められるのは仲間のごろつきのようなシーフだけだ
だが、シャットが一声かければネームドを含む歴戦のベテランが集まる
中には汚れ仕事を生業とする輩もいるだろう
今も半開きのドアの外にはシャットの配下が佇んでいる
そのシャーズはシャットが声をかけなくてもジェスチャーで
あるいはその場の空気だけで『どうするか』を判断しシャットの望む行動をするだろう
男の行動次第では、文字通りこの場で『消される』のだ
「あ、あなたが、頭目のシャット様が依頼を受けたなんて聞いてなかったんだ・・・です!
来たのは吟遊詩人の世間知らずそうな小娘だったから・・・・・!」
サク!
男の股間ギリギリでシャットの投げたナイフが床に刺さった
「ああ悪い、手が滑っちまったぜ」
言いながらシャットは男に迫りつつナイフを拾った
「で、オレの可愛い妹分がなんだって?」
ナイフの腹で男の頬を軽くはたきながらシャットは
たった今、吐きたての軽口を指摘した
その一言は男に己の失言とその罪の重さを理解させるのに十分だった
「ひぃ!
も、もうしわけ、ありません
あの娘・・・いえ、お嬢様に私はとんだ無礼を・・・!」
男は完全に怯えきっていた
このくらいでいいか、とシャットは立ち上がり命じる
「報酬は『色を付けて』満額支払え、それとリュミールたちを全面的に信用するよう町の連中に広めろ
いいか、『色を付けて満額』だ、『色』はお前の好きにしていいが
もし1Gたりとも無かったら・・・・・分かるな?」
男は壊れた人形のようにコクコクと首を縦に振った
それを見てシャットは目を閉じるとしみじみと語りだす
「あの子はな、まだ幼い頃からオレたちが可愛がってきた大事な子なんだ
ここまで大きく成長してくれて、オレも冒険に同行することができて
すごくうれしい」
シャットはここで言葉を切って、男を横目で睨んだ
「まさか、うちのギルドの支部が闇の軍団より先に立ちはだかるとは思わなかったけどな」
男はこの瞬間、下半身を尿で濡らした
「オレの目が輝いているうちは、どんな醜聞も許さない
今度、あの子に関して無礼なことを口走ったら・・・その舌を、貰うぞ!」
男は自分の口を手で覆って頷いた
このくらいでいいだろう、
シャットは男に背を向け部屋の出入り口のドアノブに手をかけた
「そうそう、言うまでもないことだけど
キミは言わないと分かんないかもしれないから言っとく
今度、オレの顔やギルドの誇りに泥を塗ることしたら
支部長を別の奴に『交代』させるからな、覚えておけよ」
去り際にシャットは言い放った
『交代』が何を意味するのか分からないほど男はバカではない
「は、はい、肝に銘じます!」
男は脱糞しながら土下座し、ひたすらシャットに拝み倒すしかできなかった
シャットが去って一時間経過しても男はその姿勢でいた
その後、男がしばらく自分の糞尿の臭いがする執務室で仕事をする羽目になったのは
言うまでもない
*
*
*
私はリュミール、旅の吟遊詩人だ
『ゴブリンの王様』騒動に決着がついたので
信頼を得た私達は行動をすることにした
報酬の受け取りはシャットさんが立候補したので彼に行ってもらい
私は早速酒場の一角を借りて詩を歌い情報のやり取りをする
ドミニクたちには聞き込みなどで情報収集をしてもらった
一時間しないうちにベステラが仲良くなった町の子供たちから
「お化け屋敷」の話を持ってきてくれた
(相変わらずコミュ力が半端ないわ、この子)
その屋敷は、古い塔を中心に増築を繰り返されていたらしい
かつては横暴なヒューマンの一族が住んでいたものの
使用人を含めた全員が病に倒れ
今では住む者はいないのだと言う
その代わり、彼らの幽霊が夜な夜な現れ
生前の暮らしをしているというウワサだ
子供たちの中には、『夜に屋敷を見ると明かりがついていた』
『昼間に屋敷の近くで遊んでいたら家屋の中で会話する声がした』等の
目撃をした子もいたらしい
別に聞き込みをしていたドミニクたちもその情報を得て戻ってきた
子供たち以外にも、夜中に通りかかった旅人や酔っ払いなんかが
同じような現象を目撃していた
どうやら、その屋敷には何かあるようだと私たちは踏む
「今すぐ調べに行く?」
私はドミニクの提案に首を横に振った
「もう遅いわ、明日の朝に行きましょう
それに、クロワルースとシャットさんがまだ戻っていないもの」
夜にアンデッドと対峙する危険さを、私は以前にエルセアの墓地で経験していた
できればアンデッドが活動できない日中に行くほうがいい
シャットさんが戻ってきたら彼にも相談しよう
それからでも遅くはないだろう
*
*
*
あたしはアルボア、久しぶりに旧友と再会した女闘士だ
フース竜騎士団の野営のテントで、あたしたちは再会した
「ご苦労だったの、クロワルース」
あたしが知らない間に長はクロワルースとつながっていた
「ミューザ様、仇敵ヴェストリのボクを受け入れてくださり感謝します」
「そんな堅苦しい挨拶は抜きじゃ
お前は私にとってアルボア同様、可愛い身内じゃよ」
ミューザ長老は事情を知っていたようで、笑いながら言った
クロワルースが『カオニュの乱』で、どんな死に方をしたかも、たぶん・・・
「アルボア、やっと会えたね、うれしいよ・・・」
クロワルースは、クロワはそう言って、あたしに寂しげに微笑む
「・・・うん」
あたしも彼女を受け入れている、というか恨む気すら無い
クロワは彼女の部族とは違うし、あたしたちと姉妹同然に育った仲だ
「相変わらず無口だね、キミは」
苦笑しながらクロワは言った
『大戦』のあの頃は、あたしにとって一番マシで幸せだった時期だ
姉妹同然の親友がいて、姉も妹もいて・・・・・・
『ピノ』が病で早逝した事だけが心残りだったけど
3人で同じ時期に生まれた仔馬を『ピノワール』と名付け育てた
もっとも、あの子も、また・・・・・・・
それに、あたしたちの中で一番のおしゃべりさん
魔術や僧侶の技に長けた天才児のオルボワは、まだいない
ホエイに頼んで探してもらっているけど
あいつですらまだ見つけられていない
で、今そのホエイは自分たちの『仇敵』につながる男を拘束してどこかに行っていた
そいつは今、猟犬の『スパニエル』を名乗っていたけど、
あたしもミューザ長老もよく知る男だ
『アルバラード』、『大戦』の以前に
あたしたちを痛めつけてくれたゾラリアの手先だ
こいつの横暴と横領のせいで『カオニュ』は怒った
挙句、その戦力を防いだだけのあたしたちを領主側が勝手に反乱と決めつけてくれたことで
防戦は本格的な反乱になったんだ
もっともあの野郎は前世の記憶を持ち合わせていないのか、
あたしたちを見るや否や「このバケモノをどうにかしてくれ」と
ホエイの尻尾に巻き付かれながら助けを求めて泣き喚いていた
あたしたちは少し考えて『絶対に殺すな』とだけホエイに言ってやった
これで命だけは助かるだろうけど、他は知らない
前世での事はもうどうでもいいけど、ホエイがどうして『猟犬』を恨んでいるのか知っているから
止める気は起きなかった
何も知らないまま見捨てるのは前世を理由にするようで気が引けたから
「あんたらが殺したピノは、あたしの妹だ」
と、見捨てる理由を言っておいた
アルバラードは青ざめてそれ以上は何も言わなくなった
「ヴェストリの長は、ノルズリを滅ぼしたことを反省していない
ノルズリを巻き込んだことを『仕方ない』としか思っていない
・・・ピノワールの事に至っては、忘れていた」
クロワの独白に、長は深く頷いた
「ならば、私も躊躇は無い
ヤツが私の姉妹の姉だとしても、な」
クロワはそれを聞いて頷いた
「じゃあ、ボクそろそろ戻らないと・・・・・
アルボア、またね」
クロワはテントから出て行った
「・・・・・アルボア、ホエ坊と繋がる事ができるか?」
言っている意味がよく分かんない
「あ~、すまん
お前は”コッチ”に疎かったんだったの・・・」
長老は少し思案してから言った
「ホエ坊のことを頭で思い浮かべて、呼びかければいい」
あたしは言われた通りにしてみた
『(どうしました、アルボアさん?)』
当人の声が頭に響く、けれどアイツの姿は無い
『(さては、ミューザお姉様に何か入れ知恵でもされたんでしょう?
連絡手段と言ったところですか?)』
策略家で通っている司令官なだけあって話が早いのは助かる
「アルボア、ホエ坊に頼んでおくれ
クロワルースの護衛を、こっそりやるように、な」
あたしはそれを素直に伝えた
無意味な破壊や殺戮は絶対にするなと釘を刺したうえで

(つづく)

 

<解説>

解説:シャットの一人称

シーフの時と商人の時とで使い分けているという設定にしてあります
ちなみにシーフの時の一人称はMMファン周知の「オレ」
商人の時は信用第一なのと良い印象を相手に与えるために「ボク」
商人の時にはカタギを相手にすることが多いので
(そもそもRPGで活躍する冒険者は全体のごく一部)
柔らかい物腰や礼儀etcを身に着けたということにしました
もちろん、キャプテン・ノーラが厳しく指導したのは言うまでもありません(汗)
それにしても彼は大きくなりましたね

ではまた

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