Monster Makers’ Conflict-第2部第2章第4話:塔の中の再会
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第2部:歴史の復活
色々動きます
////////////////////////// //////////////////////////第2章:浮遊城戦争、勃発す
////////////////////////// //////////////////////////第4話:塔の中の再会
あたしはアルボア、部族の長に同行する女闘士だ
「クロワルースが気付かれた、らしいねぇ」
長老は呟くように言った
「あの男の入れ知恵でしょう
本当にろくなことをしない・・・」
ホエイが言った
使い魔越しの会話のせいでオオカミがしゃべっているみたいで不気味だけど
「どうします?
彼をこの場で殺すことは不可能ですが
クロワルースさんを攫って合流するくらいならできます」
長老はホエイの提案に首を横に振ってから言った
「いや、気付かれないようにそのままゆっくり来てくれ
合図したら挟み撃ちじゃ」
「了解」
それを最後にオオカミは黙った
「ルガルバンダは、確かノーヒア姉様のお気に入りだったな
奴が死ねば良い顔が見れるかもしれないねぇ」
ミューザ長老は不気味に嗤った
彼女はすぐ上の姉(確かヴェストリの長)とすごく仲が悪い
決定的だったのは男を取り合った件だと聞いている
(話だと、姉が男を寝取ったとか?)
その件で殺された後で蘇生させられたものの
また『大戦』の後で殺され今度はノルズリも滅ぼされた
そういうわけで長老の姉への憎悪は果てしなく高まっている
あたしとクロワを巻き添えにしなきゃいいけど・・・
*
*
*
私はリュミール、中枢らしい部屋の一歩手前で休憩している吟遊詩人だ
壁に彫られている地図によると
ここは塔の高い所に位置している場所らしい
書いてある字は分からないけれど、絵でなんとなく分かった
わざわざ赤い字で文字が彫られている点からしても
重要な部屋なんだろう
分からない材質でできた塔の壁を傷つけることができる技術なんて
今は失われているだろうから先客が作った罠ではないことは確かだ
当時の古代人が作った罠が今も生きている可能性は否定できないけど
それだと私は対処できず死ぬだろうから
できればそういうのは無い方向で行ってほしい
「いるね、この部屋の中」
今シャットさんとクロワルースがすぐ先の部屋をドア越しに確認している
どうやらここで終点のようだ
「キミのお友達が、さ?」
シャットさんはそう続けた、クロワルースに向かって
次の瞬間、シャットさんは顔面を鷲掴みにされた
「ボクのサプライズが台無しになった
どうしてくれるの?」
「え、あの、まって、その反応は予想してない
ていうか、ボクもしかして・・・
やっちゃった?」
クロワル-スは重々しく深く頷いた
「ノーラさんに、全部報告する」
「それだけはやめてくれ!!
慈悲を!
慈悲を頼む!」
シャットさん渾身の命乞いだ
よほどノーラさんが怖いのだろう
「クロワルース、この向こうにいるのは・・・
アルボア姉、なんだね?」
ドミニクの問いかけにクロワルースは頷いた
「ドミニクとあの子が姉妹弟子同士って聞いて
仲直りさせたいと、思ったの
これは、アルボアにもナイショ
長も、あの悪魔も知らないこと・・・だったのに」
「ひぃ!」
なんかシャットさんの頭からミシミシ音が聞こえる
珍しくクロワルースが怒っているのは分かった
「ま、待ってくれ、てっきりモンタズナ派か
オークの、グレードン関係の誰かかと・・・・・・
キミがどこかに出歩いていることは分かっていたけど
密偵はいつも撒かれちゃうから
そこから先は知らなかったんだ!
アルボアだって知っていたら・・・いたたたたた!!」
「クロワお姉ちゃん、落ち着いて
シャットさんも悪気があってこんなことしたわけじゃないと思うから、
ね?」
ベステラが間に入って取りなしを始めた
本当に良い子だ
ルガルバンダさんは・・・・・・私たちの後ろを見ている
私も後ろ—来た道を見た
何もいないように見える
・・・ううん、そもそも『何もいない』のが不自然だ
こういった古い塔に付きものの、コウモリや虫の声が全くない
それに、ここに来るまで弱いモンスターにすら出会わなかった
私は屋敷にいたという貴族かルガルバンダさんが追い払ったものだと
勝手に思い込んでいた
よく考えればそれは、完全な思い込みだった
貴族が死んでもうだいぶ経つだろうし、
ルガルバンダさんは町を脅かしかねない強力なモンスターはともかく
巨大ネズミのような、どこにでもいてどこにでも入り込む
そんなものをいちいち掃除するほど暇じゃないだろう
そういったのが出てこない、あるいは息をひそめて隠れている理由は
先客がいて全て片付けたか、
もしくはそいつらが怖がるような何かが入り込んできているか、だろう
アルボア絡みでとなるとピンポイントで思いつくのは、あのトリカゴ司令官だ
「クロワルース、後ろのアイツを大人しくさせられるかい?」
「あいつは今はボクの護衛
だから、ボクに手を出さなければ襲ってこない
アルボアに手を出したら命の保証はないけど」
「そ、そうか・・・・・あいつが、ねぇ・・・」
見知った仲なのか、ルガルバンダさんは幾度も後ろを振り返って
微妙な表情を顔に浮かべていた
*
*
*
「なにをやってるんじゃ、あいつら?」
それは、あたしが聞きたい
ホエイの使い魔を介するまでもなく、ドア一枚隔てた向こうに連中はいる
会話は筒抜けだ
どうやらシャットがなんかしてクロワを怒らせたらしい
ドミニクとあの吟遊詩人たちも一緒だ
「闘争の雰囲気ではありません
どうしますか?」
ホエイが聞いてくる
「・・・あ~も~!!」
ミューザ長老は叫んだ
「もういい、通してやれ!」
あたしは頷いてドアを開け・・・ようとした次の瞬間に
向こうから開いたドアに勢い良く吹っ飛ばされた
「ぶぎゅう!」
背中に柔らかい感触、長老をクッションにしてしまったらしい
「ドミニク、あなた仲直りしたいの?
それとも不意打ちしてでもやっつけたいの?」
呆れた声が向こうの部屋からした
「アルボアとかいうのは大丈夫なのか?
ここでアイツが本気になったら私でも手に負えないぞ」
もう一人、見覚えのない男が一行にいた
たぶん、あいつが『ルガルバンダ』とかいう奴だろう
「え~と、アルボア姉、大丈夫?」
恐る恐る、ドミニクが入ってきた
「ああ、長が庇ってくれたからな」
あたしは身を起こした
「アルボア、私は別に庇ったわけじゃ・・・」
長が杖を頼りに身を起こす気配が後ろでした
「あ、あの時の露出狂の女の子だ」
「誰がなんじゃと!!」
ドミニクと長は、あたしの体越しに漫才を始めた・・・・・・
仲いいな、こいつら?
「アルボアってやっぱりキミか」
ルガルバンダは、あたしに近づく
向こうは、あたしを知っているけど
あたしはこいつを知らない
「あんた、ホエイのオトモダチか?」
あたしは皮肉混じりに聞いてみた
「殺し合う程度に仲良いですよ」
いつの間にかルガルバンダの後ろにホエイがいた
「私にはっきり土付けてくれたのは
彼と彼の息子くらいですし
・・・あと、私を艦橋ごと破壊してくれた槍使いですか」
うん、楽しそうに語れる内容じゃ全然ないんだけど
殺し殺されが娯楽な人生とか、あたしは御免だ
実際に何べんも死んでるから、たまには天寿を全うしたい
「アルボア、こいつに求婚されているって本当か?」
「ああ、まず真っ先に出る質問それだよな
本当だよ」
あたしだって罰ゲームを疑ったほどだ
「アルボアさんに変なこと吹き込んだら、その首飛ばしますからね?」
ホエイはルガルバンダの後ろからさらっと殺す宣言した
よく見るとルガルバンダの死角に陣取っている
こちらから姿は見えるけど気配も消している
・・・相当な実力を下らないことに使わないでほしいと思った
弟子が泣くぞ?
*
*
*
ドミニクがドアを勢いよく開けてくれたおかげで混乱はあったけど
どうにか、私たちは目的の部屋に入ることができた
目ぼしいものはあまりない
屋敷の怪奇現象の原因はここじゃないかと思ったんだけど
どうやら違うようだ
「はぁ?
怪奇現象?
そんなもの調べにわざわざここへきたのかい?」
向こうでミューザの呆れた声が聞こえる
どうやら完全に場違いな理由で私たちは来たようだ
「キミも知っているだろう、ミューザ
過去を再現することができる、『あの装置』を」
ミューザはそれを聞くと少し黙る
ガマグチヨタカのほうを見てから、口を開いた
「アレはこの世界を過去の、『滅びる前の姿』へ戻す機械じゃったな
それと怪奇現象とどういう関係があるのじゃ?」
「ノーヒアから、ここにそのプロトタイプがあると聞いた」
『ノーヒア』の名前を聞いて、ミューザは黙った
確か『ノーヒア』はクロワルースの育ての姉の名前だ
同時に彼女の部族の長でもある
あの女はxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx・・・?
思い出せない
確か結構ひどいことがあったはずなのに、その感覚だけが残ったまま
記憶がすっぽ抜けている
「なるほど、そいつが怪奇現象の原因だと思ったわけじゃな?
残念ながら私は違うと思うぞ
その装置が仮にここにあるとするなら、真っ先に気付いている
他に原因があるとするなら、ベイオエントの影響であろうな」
『ベイオエント』、今ウルフレンドを襲っている奇妙な力だ
今のところ分かっているのは『アンデッドの活性化』だ
確かにアンデッド自体は珍しくないし、ずっと以前からウルフレンドにも
他の大陸にも見られたモンスターだ
でも、今のそいつらの勢力は異常だった
旅立った直後の時にネクロマンサーのトゥレーヌとかいうのと戦ったけど
そいつがしたような『ゾンビの大群』が、今ではあちこちで報告されている
中には村が滅ぼされたとか、泊った村がアンデッドの村だったとか
前には無かった極端な例が次々と出てきていた
トゥレーヌみたいなのが闇の軍団にたくさんいるとは考えにくいし、
僻地にそういうのを派遣して騒ぎを起こすほど闇の軍団も暇じゃないだろう
自然発生したと考えるのがスジだ
たぶん、戦場とか墓地とか、あるいは滅んだ村とかから
アンデッドが滅ぼさなくても疫病や飢餓で、あるいは戦で襲撃で
人は死ぬし村は滅ぶ
いくら光のネームドが頑張っても、冬の時代からずっとこれは変わらないのだ
ブルガンディで出会ったトロールのリネアちゃんも・・・・・・
「で、姉様の用事はそれだけかい?」
「ああ、できればそれを回収してほしいと・・・」
「隠すな、この塔、必要なら町の消去も含まれているのじゃろ?」
それは私たちも聞いていない
「断った、もう争いは、破壊はたくさんだ
私はもう、我が子と妻を探し出して静かに暮らすこと
それだけが望みだからな
ヒューマンにもオークにも、ノルズリにもヴェストリにも与しない」
ルガルバンダさんはきっぱりと言い切った
「それは難しいと思うぞ?
お前のような才ある存在を放っておく者などおるまい
我が夫のような苛烈さがあるならともかく、な」
対してミューザは現実を突きつける
「私、言われるほど苛烈ですか?」
「「何を言っているんだお前は?」」
二人がハモって同時に妄言を吐いたガマグチへ突っ込んだ
「待たせたわね」
その時だった、窓からひらりとエルフ耳の少女が飛び込んできた
「シャロンか、屋敷はどうだ?」
「え・・・ええ、あまりいいものは見つからなかったわ」
ミューザはシャロンと呼んだ少女に応対する
「・・・・・・シャロン、そこの少女をなんと見る?」
ミューザはそう言ってルフィールちゃんを杖で指した
「まぁ、水色の魔女ルフィールじゃない!
来ていたのなら・・・」
そう言ったシャロンめがけ、ミューザはカマイタチの魔術を放った
「ちょ、何するのよ!」
「馬鹿だね!
シャロンはルフィーアを目の敵にしているのじゃ!
あの子を見てそのような反応をするはずないだろう!
正体を現せ!!」
どうやら偽物らしい
私たちも戦闘態勢を取ることにした
「おかしい、あの女、わるい気配しない」
グリンさんはそう言った
「・・・さすが、と言うべきかしら」
シャロンだった少女は白い布をどこからか取り出し
自分に被せるとサッと払った
「久しぶりです、ミューザ
我が妹よ」
「おぞましい、私を妹など思っていないくせに
よくもまぁ・・・・・」
すさまじい形相でミューザは相手を睨みつけた
クロワルースは・・・呆然として相手を見ている
「嘘、長姉さま・・・」
「なぜここに来た、ノーヒア」
非難するようにルガルバンダさんは言った
(つづく)
<解説>
解説:ヴェストリの『ノーヒア』
オリキャラ、名前の由来は「白亜紀」(ノ日亜)
4姉妹の次女で末っ子との仲はそれほど良くなかったものの
色々あって殺しあうレベルで険悪に・・・
ではまた