Monster Makers’ Conflict-第2部第2章第10話:呪われた海 | 回廊蝦蛄日和

Monster Makers’ Conflict-第2部第2章第10話:呪われた海

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第2部:歴史の復活

重要イベント発生

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第2章:浮遊城戦争、勃発す

第10話:呪われた海

「ここから入って右の道を行けば別方面へ出られます」
私はリュミール、ヴェストリの里を今から去る吟遊詩人だ
正直な話、この人たちにはもうついていけない
ノーヒアさんははっきり言って外道だ
楽しまなければ何してもいいわけじゃない
彼女の考えていることは分かるけど、やり方が問題すぎる
あんな強引なやり方を繰り返してきたのなら
彼女の首を狙う輩はごまんといるだろう
当然その中には闇の軍団や『トリカゴ』も含まれている
「では、私たちは失礼します」
私はノーヒアさんたちにお辞儀をして洞窟に入った
ここを出たら絶対にあの人の事を詩にして広めてやると誓いながら
「うぎゅう!!」
次の瞬間、私は何か固い木の幹のようなものにぶつかって顔面を酷くぶつけた
「いった~!!」
「大丈夫、お姉ちゃん?」
ベステラが私を支えてくれたおかげで転倒は免れた
「もう、こんなところに木が生えているなんて聞いてな・・・」
目の前にいたのは、赤毛の女闘士アルボアだった
どうやら私がぶつかったのは彼女の鍛え上げられてバキバキに割れた腹筋のようだ
「・・・・・・・・」
怒らせちゃったかな?
「ごめんなさい、つい本音が・・・
じゃなくて、見事な腹筋ね相変わらず」
はっきり言おう
私はこの人に殴られただけで死ぬ(涙)
両手剣を片手ずつ二刀流で扱う膂力は言うまでもない
それに彼女は両手に甲を守る装甲が施された指ぬきグローブをはめているのだ
吟遊詩人の頭蓋骨などあっさり粉砕されるだろう
「気にするな」
アルボアは、いつもの笑顔でそれだけを言うと、
私の後ろに声をかけた
「久しぶり・・・と言っていいのかな?
裏切り者のノーヒア様?」
「あなたは、ベングのアルボア
ミューザに言われて私を殺しに来たのですか?」
アルボアは首を横に振った
「殺したい、けど、それをやれば
あたしはここから生きて出られねぇだろ?」
言いつつ彼女は後ろに手招きした
3人の少年少女が進み出てくる
いや、4人だ
少女の一人が赤ちゃんを抱えていた
その少女と赤ちゃんは、額に一本の角が生えていた
それに、二人ともどこかで見かけたような・・・?
「あたしはまだ、死ねない理由があるんだよ
あんた、結界を張ってくれただろ?
おかげであたしは外に出られないんだ
この子たちを早く町に連れて帰りたいから
結界を解いてくれないか?」
ノーヒアさんは数秒の沈黙の後で
「できない、と言ったら?」
「あたしの恋人のホエイ・・・『ガマグチヨタカ』が、ここに来る」
「わかりましたすぐに解除しますはい」
すごくあっさり折れた
もう見た目が分かるくらい見事にポッキリと
威厳も何もあったもんじゃない
あんたそれでも長か!!
ジャヴェルさんは口をあんぐり開けて真っ青になってる
・・・よく見たら、気絶してるわこの人
どんだけアイツが怖いのよ
「あんたら、あいつ個人に何かしたのか?」
さすがにあっさり折れすぎて驚いたアルボアが
目を点にしながら聞いた
「いえいえいえ、全く身に覚えないですともええ」
ノーヒアさん、すんごい怪しいね!!
「気の毒だから、あたしからあいつに言っとくよ」
と、アルボアの目がジャヴェルさんに向く
「あれ?
ジャヴェル兄ぃ、こんなとこにいたんだ」
「あ、ああ、アルボア・・・久しぶりだ」
あ、ジャヴェルさん復活した
二人はどうやら知人同士らしい
まぁ、部族の長同士が姉妹だから、争うまでは交流とかあったんだろう
クロワルースもアルボアたちと仲いいし
「その、アルボア、ガマグチとはどういう関係なんだ?」
「ん、あたしに言い寄ってきたから・・・今は恋人だけど」
そうだ、一応聞いておこう
「ジャヴェル兄ぃ、あいつになんかされたの?」
そうであって欲しい、あいつには悪いけど
なぜって、あたしの中ですごい胸騒ぎがしたから
聞いちゃいけない、そんな予感が
*
*
*
「ジャヴェ兄・・・あいつになんかされたの?」
まずアレがなんかした前提から入るんだ(汗)
「あ、いや、あいつは悪くない」
「・・・ああ、つまり事故か
あたしから手を出さないよう言っとくよ」
なんか納得した様子のアルボアは、そう切り出した
「ああ、頼む・・・・・・・ん?
あいつ、お前の言うこと聞くのか?」
「あたしと長の言うことなら聞いてくれるぞ」
そういえば、ブルガンディでもあいつはそんな感じだった
アルボアの保護を優先してもいたし・・・
本気で大切に想っているんだろう
やり方はともかく
「じゃあ、あたしらは行くわ」
「待ちなさい!」
ノーヒアさんがアルボアを止めた
「あんた、これ以上面倒起こそうってんなら
オレが相手するぞ?」
シャットさんが割とマジになって割って入った
「その、石板は・・・」
ノーヒアさんはそれを無視して
アルボアが腰のベルトに括りつけている石板を指さす
「・・・こいつは、貰っとくぞ
ユニコーン族の遺産のようだけど、どうも『トリカゴ』関係らしいからな
何が書かれているかはホエイにでも・・・」
「危ない!!」
私はノーヒアさんの指先が光ってきたのと呪文を唱えだしたのを見て
咄嗟にシャットさんに飛びついて押し倒した
「なんだよ、やるってのか!?
ホエイ、来い!!」
アルボアが叫びながら剣を抜くのと同時にベルトがずれて石板が地面へ落ちる
ノーヒアさんの呪文は石板を破壊した
「!?ノーヒア様!?」
さすがに目の前で知己を攻撃されてジャヴェルさんは抗議の声を上げる
「こんなもの、存在してはいけないのです」
どうやら彼女にとって不都合な内容が書かれていたようだ
でも、それにしたって、今のはおかしい
いや、そもそも最初から彼女はどことなく機械的だ
機械的すぎだ
まるで、あらかじめ行動が決められたロボットのよう・・・
「あのさぁ、コレを見てアイツは行動に出ると思う?」
アルボアはノーヒアさんに言った
そう言えば、咄嗟に誰かを呼んでいたっけ
彼女が呼びつけるとしたら、たぶんあの司令官だろう
「あ、あの・・・」
「あたしが取り成してやるのはジャヴェル兄ぃだけだ
あんたは知らないよ
自分のケツくらい自分で拭け」
冷たくアルボアは言い放つ
そして、中に入れられていたのか、
壊れた石板の隙間から赤い水が流れているのが見えた
ドバドバと勢いよく
・・・・・いや、勢い良すぎだ!?
明らかに石板に入るわけがない大量の赤い水があふれ出してきていた
「この匂い、血だ・・・」
シャットさんが私の下から声を出した
「え」
むにゅ
「リュミール、その、当たってる」
「あ、ご、ごめんなさい」
私はシャットさんからどいた
咄嗟に押し倒したせいで
胸が彼の顔に当たってしまったけど・・・
「私は気にしていませんから、気にしないでください」
真っ青な彼に私はそう言った
「ノーラの姉御に黙ってくれるならそれでいいよ」
うん、シャットさんが青くなって震えている理由ってやっぱそれだよね
ブルグナで私を助けに来た時も、凄いことになってたし
「おい、なんだよこれ・・・」
向こうを見ると、アルボアが血の池の中に声をかけていた
いや、誰かが血の池から顔を出している
「話はあと、逃げます!!」
それは腕を伸ばしてアルボアたちを連れて血の中へ潜っていった
アルボアたちがいなくなった後も血の海は広がり続けている
「これは、『SCP』か!?」
ジャヴェルさんが叫ぶと同時、巨大な影が血の海から飛び出した
それは人間じゃないものだった
巨大なコウモリ、と形容すればいいんだろうけど
私の知るコウモリとは全く当てはまらない生物だ
そいつだけじゃない、ウナギにタコ、オオカミのようなものまで血の海から出てきている
「あの石板はレッドプールの入れ物だったの!!?」
「な・・・レッドプールですって!?」
ノーヒアさんとジャヴェルさんは、この『血の海』について知っているようだ
「何してるんだ、長なら里の民を避難させろ!」
シャットさんが動揺しているノーヒアさんへ怒鳴る
「ここにいるのは、私と彼だけです
ヴェストリは、未だ再生していません」
そういえば、違和感はあった
出迎えは副官のジャヴェルさんだけ
他は人っ子一人来ないし、見かけない
家々を見ても人の気配が全く感じられなかった
「きゃあ!?」
ベステラがタコの足みたいなものに捕まる
「こいつ!」
すぐにドミニクが助けてくれた
「ドミニク!
ベステラちゃんを連れてそのまま遠くに走って!
グリンもルフィールを頼む!」
シャットさんが指示を飛ばす
ただ事じゃない事態が起きていることを私も悟った
かくいう私は、空を飛んでいる
さっき飛び出したコウモリが故意か事故かで
私の肩をひっつかんで飛んでいるから
ここからだと、ノーヒアさんたちに襲い掛かるウナギみたいな魚もよく見えた
いや、魚じゃないのが混ざっている
木の根っこみたいなものだ、あの血の海とは別の方向から伸びている
それはタコ足うあウナギにも絡みついて、締め上げ始めていた
「え、ちょ、まって」
私はこっちに別のソレが向かってきているのを見た
あっちのタコ足はミイラみたいになった崩れていた
ああなるのはごめんだ
私は思い切り暴れてコウモリから無理やり落ちた
間一髪、根っこは私を離したコウモリに絡みつく
ただ、別の危険が私に迫っていた
この高さだと、落ちたら無事じゃ済まない
「リュミール!」
ドミニクがこっちに向かって走ってきた
そして、一跳びで家の屋根に着地すると・・・
「間に合え~!!」
私に向かって大きく飛んだ
私は彼女の腕に抱き抱えられ無事に地面へ降りられた
「あ、ありがとうドミニク」
「へへ、どういたしまして」
「お姉ちゃんたち、後ろ!!」
ベステラの警告が、私たちへ飛んだ
見ると、ドミニクの後ろから根っこが向かってきている
「っ、のぉ!!」
彼女は背中でそれを受けると、反撃の回し蹴りで砕いた
「え、ちょ、大丈夫なの?」
直撃した場所の服が破れて背中が露になっている
「アルボア姉ぇほど目立ってないけど、私も筋肉を鍛えてるんだよ!」
どうやら、筋肉を硬くして根っこを防いだらしい
すごいね
いや、それよりも根っこも凄いことになっていた
そいつは洞窟から伸びてきていて、血の海に突っ込んでいるものがほとんどだけど
何本かが私たちに向かってきている
「なんだよこれ、聞いてないよ!」
シャットさんはソレをダガーで切っているけど、根っこは次から次へと延びていた
『血の海』は、どんどん面積が減っていく
あの根っこは血の海を吸収しているようだ
「こっちです!
墓地の向こうに脱出路があります!」
ノーヒアさんは私たちに叫んだ
「ノーヒア様、それでは・・・」
言いよどむ副官ジャヴェルさんへ、ノーヒアさんは告げた
「この里は、放棄します
すべては判断を誤った私の責任です」
「そうだね」
ドミニクがさらっとジト目で冷酷なツッコミを入れた
この人が石板を壊さなければ、こんなことにはならなかったのは確かだけど(汗)
「ねぇ、あれを見て!」
炎系の魔術で根っこの相手をしながら走っていたルフィールちゃんが前を指さす
そこには先回りした根っこがあった
だけど、おかしい
全く動かないのだ
よく見ると、いくつもの先端に花が咲いていた
あの人食い花『クリムゾンローズ』に似た赤い花だ
「まさか、この根っこ・・・ベイオエントなの?」
私は、思わずつぶやいた
同時に今までの情報を頭の中で組み立てた
ベイオエントは全く不明な存在だ
『死者を蘇らせる力』であり、『魔物、特にアンデッドに力をもたらすもの』であり
目撃情報から『巨大な樹木』ではないかと言われている
同時に、思い出したことがあった
『エント』と呼ばれる、前世の世界で読んだ小説にいた凶暴な『樹木人間』の話だ
もし、『ベイオエント』がその存在、あるいは亜種だとしたら
ただの植物ではなく、意思をもって行動しているとしたら?
『クリムゾンローズ』は、その兵隊なのだとしたら?
「リュミール、突然何を言い出すの?」
ドミニクが面食らって言った
私は言った
「ここって大氷壁の近くでしょ?
だったら、ベイオエントの本体とかいうのもすぐ近くにいるんじゃないかって・・・」
私はまだ正体に迫る情報は伏せておくことにした
まだ証拠がない、『エント』にしたって私の前世の世界の本の話だ
この世界にそいつがいるとは限らない
それに、不確定な情報はみんなを混乱させるだけだろう
吟遊詩人である以上、それは絶対にしてはならない
あと、今はそれどころじゃない
「ルフィールちゃん、お墓を燃やして!」
私はルフィールちゃんへ叫んだ
「!?何を言い出すのです!!」
さすがにノーヒアさんが抗議の声を上げる
「言ったでしょう、これがベイオエントだって
あれは死者をアンデッドに変えるんです!!」
ノーヒアさんは私が言ったことを理解したのか、頷いた
「ルフィールさん、やめなさい
私がやります」
そして、呪文詠唱を始めたルフィールちゃんを制して
墓地に右手を向けた
「私の民の眠りを妨げ、魂を汚すことは長として許しません!」
詠唱なし、それでもノーヒアさんの魔術の炎は一瞬で墓地を覆いつくした
あの花が咲いている根っこもろとも
間一髪、墓地から上半身だけを出したもの
手だけが突き出たものが炎に絡めとられて灰になっていく
「ジャヴェル、彼女たちを案内しなさい
私は、この里を自壊させます!」
「はっ・・・!」
私たちはノーヒアさんと別れてジャヴェルさんへ付いていくことになった
「ノーヒアさん!」
「私は、大丈夫です!!」
そう叫ぶ彼女は、根っこを避けてその上に乗った
そして根っこを焼いていく
アレなら大丈夫だろう
私たちは脱出を急ぐことにした
*
*
*
あたしはアルボア、ベングの女闘士だ
ホエイは、あの場から あたしたちを全員連れて脱出してくれた
今いる場所は、ノルデンの拠点の中だ
「すごいですね、お姉さんの筋肉」
女の子は、あたしの手当てをしてくれた
ユニコーン族の子の方は、遠慮なしであたしの筋肉をあちこち触っている
くすぐったい
部族が健在だった頃、こうして子供たちと遊んでいたのを思い出す
今は、アルボア姉ちゃん一人だけ生き延びちまったけどな・・・
「ホエイ、あの血の海は、なんだ?」
とりあえず元凶というか全部こいつのせいだろうと思える人物に
あたしは聞いてみた
「私の”スタンド”、それがつなげた世界です
”スタンド”と言うのは・・・
言うなれば『心』から生まれた『分身』ですね」
やっぱりこいつの仕業か
「止められねーのか?
あそこには、あたしの兄がいるんだ」
時間がないだろうから要点だけ伝えた
「別の問題が発生したので、すでに機能を停止させて切り離しました」
ん?
どういうことだ?
「ベイオエント様と思われる根が捕食行動を開始しまして
あそこにあったユニコーン族の遺体も恐らくすでに・・・」
そういえば、あそこは大氷壁のすぐ近くだった
不可思議な力『ベイオエント』は、あそこから湧き出ている
・・・ところで、『ベイオエント様』って言ったかこいつ?
「『ベイオエント』に様なんて付けて
まるで個人扱いみたいだけど」
「ええ、あそこにおられるのは力を放っておられる御本人です」
言いながらホエイは左手を見せた
ミイラのように、そこだけが細く乾いている
「切り離すのが遅れただけでこの有様ですよ」
左手は、あたしの目の前ですぐ元に戻った
・・・それより、こいつが直接攻撃を受けたような記憶はない
受けていたのは『スタンド』とやらの方だろう
あたしは『スタンド』のダメージは本体にフィードバックされるのだろうという推論に達した
「やれやれ、さすがにくたばってはくれんか」
水晶玉を見ながら長はつぶやいた
そこには、根っこに乗りながらそれを焼いていくノーヒアの姿があった
ホエイの放った怪物すら吸い殺したあの根っこも
彼女は食えないと判断したんだろう
「・・・・・待ってください、どういうことですかこれは?」
その映像に、ホエイが疑問の声を上げた
「ん・・・・・・そうじゃな
姉上、どうしてあんな『紛い物』を用意したのやら?」
長も何かに気づいて、そう呟いた
*
*
*
「『タカ』大将の作戦は滞りなく終了したそうです」
「ヤコブレイトはどうした?」
「現在、ケフルに向かって航行中」
「そうか、現地での作戦も順調そうだな」
「当艦隊、まもなく例の第三惑星のある恒星系に到着します」
「進路そのまま、迎撃は警戒しないでいい
あの惑星の文明は崩壊済みだ
ああ、念のため生きている無人兵器がないかサーチしろ」
「了解」
「(我々は、今度こそ勝たねばならん
500年前のセントーラでのあの出来事も、
我々の出自も
永遠に隠ぺいするために、な・・・)」

(つづく)

<解説>

解説1:ジャヴェル

彼が転生した妹ピノを自分が手にかけたことを知るのは
まだあとの話です

 

解説2:ベイオエント

この物語のベイオエントの正体にリュミールさんはだいぶ近づきました
そして、彼女の情報と開いた活路は
この後の趨勢に大きく影響します

解説3:ロボットのよう
伏線です

ではまた

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